米金融業界が注目するフィンテックの「データ地図」から見える事実

マーク・ダコスタ、ヒシャム・オウジリ

PICK UP2. ENIGMA

2人の哲学者が機械学習とAI技術を使ってリアルタイムのグローバル経済を映し出す地図を生み出した。 世界トップの金融企業が列をなして彼らの門戸を叩いている。



2018年末から35日間にわたって続いた米連邦政府の一部閉鎖。経済にどれほどの打撃を与えたのだろうか? 連邦政府職員は74万7573人の給与総計63億5484万5148ドルが未払いとなった。毎秒2118ドルのペースでコストが積み上がっていったことになる。今回の混乱の全体像、そして個々の状況を把握するのはとてつもない作業だったはずだ。

ところが、ニューヨークにある無名のフィンテック企業「エニグマ」がこれをやってのけた。刻一刻と膨らみ続けるコストを集計し、「政府閉鎖2018-2019」というウェブサイトを立ち上げてリアルタイムで公表したのだ。

計算の根拠になったのはすべて公表されたデータ。行政管理予算局が発表している109の連邦政府機関の緊急時対応計画などをもとに、最終的に連邦政府の文書2000ページと表計算ソフト200万列のデータを入念にチェックし、損害の推移をリアルタイムで割り出した。しかも、この作業には、構想から公表まで3台のコンピュータでのべ36時間しかかかっていないのだ。

データはどれも公表されたものだが、官でつながりはない。エニグマは、そうしたデータを短時間で見事にまとめ上げ、ある意味、独自の視点で捉えたグローバル経済を世に示したのだ。その手腕に資産運用大手「ブラックロック」や簡易決済サイト「ペイパル」など世界屈指の企業が目を付けた。その結果、エニグマのデータにアクセスするため数多くの顧客企業が年間100万ドル以上を投じるようになっている。民両セクターの情報源はそれぞれバラバラでつながりはない。エニグマは、そうしたデータを短時間で見事にまとめ上げ、ある意味、独自の視点で捉えたグローバル経済を世に示したのだ。その手腕に資産運用大手「ブラックロック」や簡易決済サイト「ペイパル」など世界屈指の企業が目を付けた。その結果、エニグマのデータにアクセスするため数多くの顧客企業が年間100万ドル以上を投じるようになっている。
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文=アントワーヌ・ガラ 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=フォーブス ジャパン編集部

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