テクノロジー

2019.07.11 07:30

米金融業界が注目するフィンテックの「データ地図」から見える事実

マーク・ダコスタ、ヒシャム・オウジリ


ニューヨークのフラットアイアン地区にあるエニグマの本社社屋。会議室には哲学者の名前が付けられ、本棚にはプログラミング読本から哲学の古典まで並ぶ。オタクっぽい哲学的社風を備えているが、シリコン・バレーやウォール街の顧客企業や出資者も多い。これまでに、前出のブラックロックやペイパル、アメリカン・エキスプレス、メットライフなどが顧客として、エニグマと契約を結んでいる。過去7年間にベンチャー投資家やヘッジファンドが約1億3000万ドルを出資。エニグマの収益は毎年3000万ドル拡大し、フォーブスU.S.は同社の企業価値を7億5000万ドルと見ている。
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グリン・キャピタルの投資家、ジョン・フォーゲルゾングは、エニグマがオラクルやIBM、SAS、SAPなど、昔ながらの閉鎖的な大手ハイテク企業の脅威になり得ると考えている。「新たなデータセットをひとつ取り込むたびに、エニグマが顧客のビジネス・プロセスを向上させる力がどんどん大きくなるからです」。

ブラックロックの最近の好事例がある。新任の最高マーケティング責任者フランク・クーパーが、6兆ドルの資金を預かる同社をいかに刷新できるか検討していたところ、エニグマが意外な事実を突き止めた。伝統的なアプローチでは地域や人口構成でターゲットを絞り込んでいたが、顧客の住む場所と退職後への備えの間にはほとんど相関関係が見られなかった。一方で、政治活動への関心による違いが大きいことがわかったのだ。「政治的に活発な人は、賃貸暮らしであっても、退職後のことをしっかりと計画している傾向がはるかに強い」とクーパーは言う。「我々にとっては衝撃的な事実でした」。

ところで、エニグマはフェイスブックのように、データの使い方をめぐって問題は起きないのだろうか?オウジリは「データは相手がまっとうな人物かどうかを判断するための手段だ」と言う。「データを共有するニーズは、そもそも悪意がないという前提から生まれるものなのです」。
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エニグマ◎2011年創業。これまでに、100カ国以上で10万ものデータセットを作り、3000万の小規模事業の情報を整理。米国の人口に関する1400億点のデータ、裁判や特許申請記録も蓄積している。

文=アントワーヌ・ガラ 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=フォーブス ジャパン編集部

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