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IBM Researchディレクターのダリオ・ギル

「Watson」でAIの商用利用の先陣を切ったIBMが、マサチューセッツ工科大学(MIT)と手を組みAIの研究開発を行う「MIT-IBM Watson AIラボ」を展開している。IBMは10年で2億4000万ドルを投じるとしており、同社にとって最大の産学連携プロジェクトとなる。

AIが普及期に入る中で、IBMとMITが進めるのはこれまでとは異なる“広いAI”だ。グーグル、マイクロソフトなどハイテク企業各社がAIの研究を進める中、リードを維持する狙いとも取れる。

誤解も多く、混乱している「AI」

MIT-IBM Watson AIラボは2017年9月に開設、すでに約100人もの研究者が50近くのプロジェクトを進めている。そこでの取り組みや狙いについて5月16日、来日中のIBM Researchディレクターのダリオ・ギル、ラボのディレクターとしてMITのアントニオ・トラルバ、IBMのデイビッド・コックスが説明した。

創業108年のIBMと米国における工学の権威的存在のMIT━━2社の関係は新しいものではない。AIでは1956年夏のダートマツ会議に両者の研究者が揃っており、機械学習という言葉は1959年にMITのエンジニアが生み出したと言われている。

そしてIBMのWatsonといえば、2011年にクイズ番組「Jeopardy!」で人間のクイズ王に勝利した。これは、現在のAIブームのきっかけと言えるシンボリックなイベントとなった。

そうして現在、「AIという言葉はないぐらい浸透している」と日本アイ・ビー・エム執行役員で研究開発担当の森本典繁はいう。しかし“AI”という言葉の中には、まだ実現していないSFのようなAIを指す場合もある。


日本アイ・ビー・エム執行役員で研究開発担当の森本典繁

IBMにとって現在の“AI”は、「狭いAI」であり、目指すのは「汎用AI」だ。AIの定義なしに使われていることから「混乱を招いている」とギルは付け加える。

ギルによると、「AIは全ての仕事、職業に影響を与える水平方向の技術」という。つまり、AIはまだ早期段階にすぎず、その潜在性と可能性は計り知れない。実際、”汎用AI”は「現時点で我々にはわからない。少なくとも2050年以降」というぐらい時間がかかるというのがIBMの読みだ。

だからこそ、長期的な開発が必要だという。2億4000万ドルという金額が目を引くが、IBMとMITは10年という期間も強調する。「AI開発は長期にわたって続けていく必要がある」とギルは語るとともに、「ソフトウェアが全ての職種に関係するようになった。AIも同じで、今後AIが入っていないソフトウェアはなくなるだろう」と予言した。

文・写真=末岡洋子

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