これから10年で“狭いAI”から“広いAI”へ
ここでIBMによる”狭いAI”と”汎用AI”の定義を紹介すると、”狭いAI”は「定義が明確になされた領域でシングルタスクで行う。モデルのトレーニングに十分なデータがあれば、明確に定義されたタスクで人間を超える精度を持つテクノロジーを構築できる」という。例えばガンの早期発見では画像診断で医師を上回る精度を達成している。
IBMとMITは、AIは”狭いAI”-"広いAI"-"汎用AI"というフェイズで進化すると考える
“狭いAI”ではデータがたくさん必要で、ラベリングされている必要があるのに対し、ドメインをまたぎ人間の赤ちゃんのような学びが可能なシステムが“汎用AI”だ。2つのAIの間にあるのが“広いAI”であり、この“広いAI”こそ今回のラボの領域となる。
「狭いAIから広いAIへの移行段階に差し掛かりつつあり、このラボの目標はその移行を進めること」とギル。
”広いAI”はシングルタスクからマルチタスクになり、マルチモーダルになる。「音声や自然言語も利用して、クラウド、センサー、モバイルなど分散環境で実行する」(IBM)と予想する。
例えば”狭いAI”が得意とする学習に、推論を組み合わせることで深層学習がより高度になるほか、ニューラルネットワークとシンボリックAIを組み合わせた”ニューロシンボリックAI”システムも重要な鍵を握るという。
ラボは産学連携の新しい形を目指す点も特徴だ。これまでのように「お金を出すだけではない」(森本)というように、チェアとディレクターにはIBMとMIT、それぞれから1人ずつが就任し、プロジェクト単位でも必ず2者の研究者が参加している。
MIT全体で約180の提案があり共同でレビュー、その結果49のプロジェクトが選ばれた。プロジェクトは毎年追加していくが、大きな柱として「AIアルゴリズム」「AIのための物理学」「セキュリティ」「AIの産業応用」「AIのもたらす豊かさの社会的共有」5つがある。
MIT-IBM Watson AI Labでは5つカテゴリで合計49のプロジェクトを擁する