「年30億足、中でもメジャーな男性市場」を選んだのは戦略だった
ルパレル・グルワダによると、インドは毎年30億足の靴を生産しているそうだ。「そして、生産する靴の90%を国内で消費し、残りを輸出しています」
男性向けの靴市場はそのかなりの割合を占めている。彼女が参入しようと決めたのもそれが理由だ。
「実は極めて戦略的な判断でした」と彼女は話す。
彼女は自分を、デザイナーであるよりも先に起業家である、と思っている。そして、靴業界にニッチな市場を見つけて、そこに参入しようといったん決めたら、成功するために知るべきことはすべて知ろうと学び始めたという。『Hello!』誌で4年を経て、ムンバイの「靴デザイン・開発大学」で上級デザインの半年コースを受け、いちから靴を作る技術を学んだ。
「実践的なノウハウのほうが、理論よりも重要だと思っています」と彼女は言う。靴作りの複雑さをもっとよく理解しようと、彼女はさらに地元の靴工房で働き、仕上げにはイタリアに渡り、ナポリで4カ月間仕事をした。
ビスポーク(受注製作)の靴。伝統的な革製のケースに入れて届けられる。
彼女が自分のレーベルを立ち上げたのは、2012年8月。
「最初は外注で、フリーランサーとして靴を作るところから始め、少しずつ成長して、自分の工房と職人を持てるようになりました」
ウェブサイトのカスタマイズオプションでは、顧客はまず素材を、動物(レザー)と植物(プレザー、綿で裏打ちしたポリウレタンの人工皮革)から選ぶことができる。デザインの選択肢はオックスフォードからダービー、モンクストラップからモジャリ(先が尖って弧を描く中東風の靴)までさまざまだ。さらに形、スタイル、色、内張りやソールも選べる。
ルパレル・グルワダがデザインする靴は金持ちばかりが買うわけではない。価格帯は幅広く、カスタマイズの靴は、およそ1万ルピー(約1万6000円)から。顧客の注文に応じて、高価格帯の仕上がりになっていく。
彼女がウェブサイトで紹介しているのは、「大衆向けでも品格のある」靴だ。一方、究極のカスタマイズシューズは、オーダーメイドを求める顧客をターゲットにしている。
顧客との打ち合わせの際、彼女は「究極のカスタマイズ」といういわば「アート」について伝えることに、かなりの時間を費やす。オーダーメイドの靴を作り上げるまでの工程について、すべてが手作業であるがゆえに完璧ではないところが美しいこと、そしてだからこそ2足と同じ靴はないこと、などを伝えるためだ。
彼女のレーベルでは、靴本来の美しさを強調するため、手作業による靴にさらに芸術的な手染め(パティーヌ技法)を施している