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2019.05.14

マルチタスクがいまだに過大評価される理由

Andrey_Popov / shutterstock

マルチタスクは誰もがすることだ。あなたも今まさにしている最中かもしれない。

「マルチタスク」という言葉は1960年代に初めて登場し、以降徐々に知られるようになった。特に、コンピューターの時代が到来し、複数のことを同時にする機会が増えてからは広く普及した。インターネットが出現するとマルチタスクの機会はさらに増え、今や多くの人はブラウザーに複数のタブを開けてメールやツイッターを確認し、少し仕事をしつつ、ネットで犬の動画を観ているかもしれない。

だが生産性の観点では、マルチタスクは一般的にとても悪い行為だ。マルチタスクをすると、注意力が分散し、どれもうまくこなせなくなってしまう。この点はよく知られているにもかかわらず、仕事中に自分の集中力を絶つさまざまなことから逃れるのは、時に非常に難しい。

この原因はおそらく、私たちがマルチタスクを楽しんでいることだけでなく、多くのことを終わらせるのに効果的な方法だと信じ込んでいることにある。これは、ミシガン大学による最近の調査で示された点だ。この調査では、マルチタスクにメリットがあるという幻想を、良い結果につなげられるかどうかを調べた。

マルチタスクに対する認識

研究チームは、人がタスクに対して持つ認識が変わると、パフォーマンスに影響するかどうかを検証する実験を行った。例えば、そのうちの一つの実験では、ボランティアに対し自然の動画を見るように指示し、その後被験者を2つのグループに分けた。

1つ目はマルチタスクのグループで、直前に見た動画に関連した学習タスクを実行しつつ、動画のナレーションの書き起こしに取り組むよう指示された。2つ目のグループは全く同じタスクを行なったが、各タスクは別々の活動として連続して行われた。ボランティアは全て、2つのタスクが終わった時点で抜き打ちテストへの解答を求められ、動画に関する知識を問われた。

その結果、マルチタスクのグループにいる人は、タスクを一つずつ行なったグループよりも、書き起こしした単語の数と書き起こしの質の両面で良い成績を収めた。また最後に行ったクイズでも、マルチタスクを行ったグループの方が優秀だった。

研究チームは「最も基幹的な発見として、2つのグループの間で全く同じ活動を行った場合、自分がマルチタスクをしていると考えている人たちは、一つのタスクをしていると考えている人よりも集中し、良い成績を残すことが分かった」と述べている。

研究チームはこの発見の検証するため、さらに32の実験を重ねた。うち一部では、タスクへの集中度を測るため視標追跡技術を使用した。これら全ての実験結果を分析した結果は一貫しており、自分がマルチタスクをしていると考えているときには集中力が高まり、より高いパフォーマンスを出すことができるというものだった。
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編集=遠藤宗生

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