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2019.05.14 06:30

マルチタスクがいまだに過大評価される理由


脳の変化

もちろん、この研究結果は「マルチタスクは良いことだ」という考えと混同すべきではない。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームによる2014年の論文では、多くのことに一度に取り組むことで脳に変化が起きることが示されている。研究チームは、人が同時に複数の機器を通してマルチタスクをしているとき、認知・感情の制御に関係するとされる脳の部位の灰白質密度が下がることを発見した。

研究チームは「メディアでのマルチタスクは現在、私たちの生活に広く浸透しており、私たちの認知・社会感情的健康に与える影響に関する懸念が高まっている。私たちの調査は、メディアのマルチタスクと脳構造の間のつながりを初めて示したものだ」と述べている。

研究チームは、実験の参加者に脳のスキャンと、さまざまなメディアの使用についてのアンケートを行った。結果、定期的にマルチタスクを行うことと、前帯状皮質での脳密度の低下との間には関連が見られた。

冒頭の研究では、自分がマルチタスクをしていると思い込むことができれば高いパフォーマンス水準を引き出せるという、マルチタスクの良い効果が明らかになった。ただこの実験では、ボランティアが行なったタスクは互いとの関連性が非常に強く、仕事をしながら面白い犬の動画を見ることと同じにはできない。パフォーマンスを上げる秘訣(ひけつ)は、認知的負担の観点で一貫性のある複数のタスクを行うこととみられる。

研究チームは結論として、「あるタスクが他のタスクとどれほど近いか、あるいは遠いかが結果に大きな影響を与える可能性がある」と指摘。「私たちが行なった実験では全て、タスクはかなり近いものだったが、各タスクの構成要素によりこの効果がどれほど変化するかを理解することが非常に重要だ」と述べている。

編集=遠藤宗生

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