「できるかどうか、うまくいくかどうか」とは、認知脳による理屈的な判断によるもの。一方で「やりたいかどうか」は、自身の中にしかない感情的な判断によるもので、まさに非認知脳の働きの表れなのだ。
「わたしには感情があまりないように思われていますが、こう見えて感情がたくさんあるんですよ」とイチローは話していたが、「感情」という言葉を野球人生最後の大切な引退会見で口にするのも、日ごろから非認知脳を大切に生きてきた証拠だとあらためて感じたのである。
イチローのすごいところは、4000本安打を打ったとか、45歳までメジャーで現役を続けたといったことはもちろんだが、なによりその生き方、脳の使い方を意識的に実践してきたことなのだ。
これはスポーツの世界のみならず、ビジネスシーンでもまったく同じことが言える。最近、ウェルビーイングやサステナビリティといった言葉を耳にすることが増えたが、ビジネスシーンに置いても、外の世界に働きかける認知脳と、自分自身と向き合う非認知脳との両立が非常に重要なのだ。
心理的安全性を担保した関係の質の高い組織づくりにおいても、このマインドセットは必須である。自分の心と向き合い、自分の感情に寄り添っていく「非認知脳力」こそ、これからの時代益々必要になってくるだろう。平成が終わり、これから始まる令和の時代こそ一人ひとりが向き合っていきたい課題である。
連載:スポーツ心理学で紐解く心の整え方
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