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2019.02.26

テクノロジーは未来の観光をどう変える? デジハリ杉山学長に聞く

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青木:今日、杉山学長に一番お聞きしたかったことですが、テクノロジーは観光をどう変えるのでしょう?すでに起きている事例などあればぜひ知りたいのですが、たとえばARやVRと観光は重なりますか?

杉山:重なりますね。京都の神社仏閣は、完成してから1300年くらい経っていてまさに侘び寂びの世界じゃないですか。それをVRを使って建立時の映像を観られたりするのはどうですか?「わぁ、ピカピカだ!ここは緑だったのか~!」とかね。「今は石垣しか残っていないけれど、こんなに立派な城だったんだな」とか。

これは実際の話なのですが、東京オリンピック招致の際には、国際オリンピック委員会委員へVRの技術を使ったプレゼンテーションが行われたんですよ。「ここにはこんなものが建ちます」と未来を見せたんです。

青木:へぇ、知らなかったです!過去と未来を行き来しながら、今の日本を見られるのは、ちょっと想像しきれないですね。もうひとつ学長に聞きたかったことがあります。日本の観光を面白くするために、テクノロジーはどのような形で活用していくべきでしょうか?

杉山:すぐにでもやったらいいのにと思うことは、言葉の問題を解決すること。今は、英語と中国語で対応できていたらまだいい方といった状況だけど、もっと多言語化したいですよね。スマホでバーコードを読み込むと自分の国の言葉で音声が流れるようにするとか。

やっぱりその場所の歴史や豆知識など、背景にあるストーリーを伝えたいじゃないですか。せいぜい1分くらいで十分だと思うから、20カ国くらい対応できたら随分とよくなると思うんです。それは、先端技術ではないけれど、テクノロジーでできることには変わりないし。

青木:旅行をしていく上で、その場所の背景を知っているかどうかで、その場所の体験価値が大きく変わります。お寺などの歴史ある場所に行っても、説明文も言語対応していないことも多いですし、その部分をテクノロジーで解決できたら最高ですね。

杉山:国の援助で共通のプラットフォームを作り、それを各自治体に配って、中身を入れてくださいと頼んだらいいんじゃない?

青木:プラットフォームを作った後、どうコンテンツの質を担保するが課題になりそうですね。その部分を、うちの会社で担っていきたいです。

杉山:説明を聞いてはじめてありがたく思えることって多いじゃないですか。神田明神もなんの前知識もなくただ見に行くのではなく、「江戸の鬼門を守ってるんですよ」という話を聞くだけで一気にありがたみが増す。一言でもいいから説明ができたらいいと思います。

青木:たしかに「旅ナカ」で使えるのは、外国人観光客にとってもありがたいことですね。訪日旅行は、旅行前に旅の計画をたてる「旅マエ」、訪日旅行中の「旅ナカ」、帰国後に余韻に浸る「旅アト」の3つのフェーズに分かれると言われています。

たとえば、日本の観光情報を発信しているMATCHAは、旅マエでよく使われています。旅ナカの体験の質の向上をするために、どう新しいテクノロジーをどう取り入れるのか。それが飛躍のキーになると思っていて。

杉山:身近なテクノロジーとしてはネットを使った動画のリアルタイム配信とかどうかな?取材して、編集したものを見せるのもいいけれど、「同時に見てるぞ!」という生配信系も興奮するよね。時差とかも気にしないでさ。

青木:渋谷のスクランブル交差点でできたら、かなりカオスなものが生まれそう。映像を撮っている人も多いですし、それをつないでいくというか。

杉山:それはわりと簡単にできそう。あとは360度ムービーのリアルタイム配信とかね。重めだけど面白いかも。どこかにカメラを置いておくのもありだと思うし、ある特定の時間だけ生配信するのも面白いかもしれませんね。5Gになれば、すぐできるね。

青木:5Gになってもの動画配信すごく速くなると、体験の共有の仕方も今よりリッチに、リアルタイムになっていきます。

杉山:2時間の映画も3秒でダウンロードできるそうですよ。そうなると次はもっとハイクオリティなもの、たとえばHDではなく8Kとかを送りたくなるんだろうけど(笑)。

青木:めちゃくちゃ早い(笑)。 結局、何を実現したいかということですよね。テクノロジーはあくまで手段。

杉山:ある外国人観光客Aがどこかに行く。「よかったなぁ」と満たされて帰国する。今度は、違う外国人観光客Bが同じ場所に行く。その両者を繋げたらいいんじゃない?Bが「今到着しました」、Aが「あの奥をもっと見たかったんだけど、見られなかったので、進んでくれませんか?」とか、映像を見ながらやりとりできるような。

青木:空間にタグを付けるということですよね。ある種、共通言語のようなもの。いいなぁ、きれいだなぁ、といった感情をのせる。

杉山:「ここ行った方がいいよ」といった同胞からのおすすめ情報は、やっぱり信用できるじゃないですか。行ってよかった場所、食べてよかったものは、ついつい教えたくなりますよね。それが同じ国の人相手なら、より伝えたくなるものでしょう?

青木:日本での観光のあり方が、今後さらに変わっていきますね。僕たちも日本の旅行体験が変わるようなサービスを作っていくので、楽しみにしていてください。

連載 : 旅から学ぶインバウンドの最前線
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構成=梶山ひろみ

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