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旅から学ぶインバウンドの最前線

Venus.1777 / Shutterstock.com

前編では、第二回の記事で触れた「海外からのゲストに中長期滞在をしてもらうために必要な要素=ゲーム性」というキーワードがきっかけとなり、文教大学国際学部国際観光学科の高井典子教授と世界中から人を呼び込むために大切なことや、観光業を支える文化の作り方について語り合った。

後編では、多くの自治体が当たり前のように観光地化を推奨している現状への違和感や、観光という鏡を通してまちの発展を実現する方法など、観光の可能性を探る。


観光という鏡を通して、自分たちの将来を照らす

高井:いろんな地方自治体から「どうしたらもっと外国人観光客が来てくれるようになると思いますか?」って聞かれますよね? でも「どうして観光客に来てほしいのか」、その理由まで考えている自治体はそんなに多くないと思っています。実際はどうですか?

青木:そうですね。目的や目標がないままに「とにかく観光客を増やしたい」という相談を受けることは多いです。

高井:皆が横並びに「隣の県がうまくいっているからなんとかしなきゃ」と思っている。私もそういった方々に「あなたのまちは10年後、20年後、どんなふうになっていたいですか?」と尋ねることがあるのですが、答えられないことも多いんですよね。目的と手段がわからなくなってしまっている。

その背景には隣がやっているからうちもやらないと文句を言われるとか、もらえる補助金はもらっておかなくちゃ損だといった短絡的な思考があるのかなと感じます。観光は地域が豊かになり住民が幸せになるために選び得る『手段のうちのひとつ』でしかないのに、まるで万能薬だと思われてしまっているような。

青木:どの自治体もが観光に走るこの流れは、総理大臣が掲げる3本の柱の1本がインバウンド観光になったからですよね。そうなると自治体のトップもインバウンドを優先するから、予算もとりやすくなる。

弊社ではお客様から相談を受けた際に、目的とターゲットについて聞くようにしているんですよ。「何が達成できたら最高ですか?それを誰に対してやるんですか?」と。ついついWhatとHowに目がいきがちですが、目的やWhoを決めることは大事ですよね。事業でも往々に起こりうる問いなんですけど。

高井:とにかく売上を上げたい、大きくなりたい。でも、それでみんなが幸せになれるのかという話ですよね。従業員は?お客様は?社会は? 観光地になるということは、外から人がいっぱいやってくるということです。それがどういう結果をもたらすのか、もっと世界を見渡してみてください。無自覚にやってしまうと取り返しのつかない劇薬にもなりかねない。

今の観光ブームは自分たちの在り方に自覚的になれるチャンスだと思うんですよ。なぜ他の産業ではなく観光を選ぶのか。どんな観光地になりたいのか。観光という鏡を通して、自分たちの将来を照らすことができる。

青木:そうですね。同時に手段として観光を選びたいときもあると思うんですよ。その場合、どうしたらいいと思いますか?

高井:うーん……。手段として割り切るのであれば、KPIを設定すべきだと思うんですよね。どこまでやるかをはっきりさせる。それができていれば、これは必要だけど、これはいらないよねって自然と引き算ができると思うんですよ。

たとえば雇用をここまで増やしたい、経済波及効果はここまでとか。そういった数字に限らず、住民アンケートをとって「観光客が増えたことで、〇〇がいい感じになった」といったポジティブな回答が出ること、でもいいですよね。

観光は場所ありきのもの。成長には限界があることを自覚するのが重要です。企業が買収を繰り返してどこまでも規模を拡大するのとは違うんですよね。

構成=梶山ひろみ

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