デジタルハリウッド大学(以下デジハリ)は、3DCG、グラフィックデザイン、アニメ、Webなどのコースを設けた、デジタルコミュニケーションを学べる国内唯一の大学だ。学長自身も工学博士であり、講師として名を連ねる現役のクリエイターや研究者と深い親交を築くなど、最新のテクノロジーのなかに常に身を置いてきた。
杉山学長との対談を設定した経緯は、私が日頃から気になっている「テクノロジーが観光をどう変えるか」という疑問をぶつけられると思ったからだ。
しかも、ここ数年、でデジハリで学ぶ留学生が増えているとのこと。留学生たちは、何を魅力に感じて、日本で暮らし、学ぶことを決めたのか。その理由を知ることは、インバウンドのヒントにも繋がるはずである。
“タブー少なき自由な日本”をいかにプレゼンするか
青木:デジハリには留学生が多いそうですが、今はどれくらいいらっしゃるんですか?
杉山:全学生の3分の1程度です。大学院も合わせると学生は1338人、その内476人が留学生。常に30カ国以上の学生が在籍しています。日本に興味を持つきっかけは、やっぱりアニメなんです。
青木:やっぱりアニメが強いんですね。留学生のみなさんは、卒業後どんな進路を希望しているんですか?
杉山:アジアの留学生で多いのは、自分の国に戻って日本のアニメのような作品を作りたいという学生。今はネットがあるから、海外で日本のアニメを見ている人もパッと調べれば「このアニメは日本で作っているんだ」と知ることができるけれど、ネットが普及する前はそういうことに気付かないまま、海外では普通のこととして日本のアニメが見られていたんですよ。
スイスでは『アルプスの少女ハイジ』が放映されていましたけど、スイスの人はまさかハイジが日本で作られたものだとは知らないし、もちろん宮崎駿が作画に関わっていることも知らなかった。ところが90年代後半になると、各国のオタクが「どうやらこれは日本のアニメらしいぞ」と気付き始めたんですよね。
青木:実際に国に戻って活躍している卒業生もいるんですか?
杉山:徐々にですね。海外では「アニメは12歳以下の市場である」という認識が一般的です。だから、大人にも楽しめるアニメは予算が出ないし、企画も通らない。
でも、日本に学びに来ている留学生はそういったアニメではなく、『攻殻機動隊』のような作品を作りたいと思っているんですよ。わざわざ日本に留学する理由はそこなんですよね。ほかにも中国にはアニメを学べる学校がたくさんあるけれど、国立の学校ゆえに国が喜ぶようなものしか学べないんです。