青木:なるほど。日本政府は「インバウンド」という言葉を使いたがりますが、僕は、そこももちろん大事だけれど、日本で働き、日本に住む人を増やすことも大事だと思うんですよね。友人は友人を呼ぶじゃないですか。日本に住む外国人が増えれば、そのつながりで日本を訪れる人も増えると思うんです。
旅行で短期滞在するよりも、住んだ方がその土地の影響を受けやすいと思うし、国に戻っても日本文化を広めてくれるんじゃないかなと。税収の面でも日本にとってプラスになりますよね。
杉山:日本で働き、住む人を増やすのが大事という意見には同感です。留学生みんなが日本のコンテンツに憧れていて、そのうち90%の学生は日本に残りたいと言っています。でも、ビザの問題などなかなかハードルが高くて、みんながみんな残れるわけではないんです。
青木:一時期クールジャパンの文脈でアニメがフォーカスされていましたが、今は落ち着いてきている印象を受けます。とはいえ今日は学長のお話を聞いて、日本を好きになるきっかけとしてアニメは強いんだなと実感しました。学長は文化外交についてはどんな考えをお持ちですか?
杉山:うーん……。やっぱりアニメって、官公庁のおじさんたちにはなかなか理解するのが難しいものじゃないですか(笑)。それもあってか、流れはアニメなどのカルチャーから日本食へと変わってきていますよね。
たしかに日本食は世界的に評価されている料理とも十分肩を並べられるレベルだと思います。だからインテリなエグゼクティブ層には、アニメよりは料理の方が響くと思うんです。
青木さんも海外に行くと「このお寿司まずいな」と思うこと、あるでしょう?日本食という文化を正しく知ってもらうのはひとつの手だと思います。
そして、もう一つ。海外の人をこれだけ惹きつける日本のアニメ、アキバ文化が生まれる根本を理解してもらうことが大事だと思うんですよね。日本は意外と自由だから、こんな文化が生まれてきたんじゃないかな。宗教にも縛られないでしょう?神社にお宮参りに行き、教会で結婚式を挙げ、葬式は仏教。一神教も多神教も自由に楽しんでいる。
この前も誰かと話していて、「日本は多神教ですよね」と言われました。一神教の人から見れば多神教に見えるかもしれないけれど、僕たちはそれすらも意識してないんだけどなって。すごく自然なことなんだよね。
青木:何か困ったときには神頼みしますけど(笑)。日本のいいところって、古いものを潰すことなく、新しいものを取り入れて、ミックスさせて成立させてしまうところなんでしょうね。
杉山:どれが一番とかも言わないしね。日本のアニメは、血がドバーッと出たり、首が飛ぶのもありでしょ。海外だとダメですからね。とにかくタブーが少ない国なんですよ。そういった根本の部分を海外、とくに欧米の方にわかってもらえたらいいだろうに、うまくプレゼンできているツアーってないですよね。
青木:それができているツアーは、まだ聞いたことがないですね。その点をしっかり伝えられたら日本への理解も高まるし、ニーズもあると感じます。