──先ほどの部活の承認もそうですが、少々乱暴に言えば、「ビデオゲーム=オタクの趣味」だと認知されていたものが、「eスポーツ」に変わることで捉え方が変わりつつある。プレイヤーも周囲も含めて、いまはその過渡期なんですね。
小澤:eスポーツはピアノなどの趣味だと捉えたほうがわかりやすいかも知れないですね。習い事でピアノをやっていた人が外部のコンクールに出る構図に近い。ですが、それからはどうやって飯を食っていくのかという問題があります。
但木:僕は、むしろこれは面白い状態だと思っています。例えば、日大ラグビー部の事件や甲子園で再起不能になるまで肩を酷使してしまう、といったスポーツ業界で起こっている問題と、スポーツが学校の部活動という枠組みの中で奨励されてきたことは決して無関係ではないでしょう。
eスポーツは肉体を動かすスポーツに通じる部分もありますが、だからといって全てをスポーツと同じ枠組みで考える必要はない。例えば、それこそDiscordで学校をまたいだチームでeスポーツの大会に出てもよいでしょう。むしろeスポーツをアンチテーゼとして、「部活動だけが本当に子どもの活躍の場なのか?」と問い直すきっかけになってほしいですね。
ビットキャッシュの小澤脩人
──では、そんな中で改めて今後「Esportsの会」はどんな活動をされるのでしょうか。
荒木:すでにここをきっかけにチームとプレイヤー、プレイヤー同士などがつながり始めています。これからはeスポーツで起業したい人と彼らに出資したい人、業界への理解が深い人もつなげたいですね。企画書を公開して気に入ったらメッセージを送るなど、そのための仕組みもつくることができるはずです。
小澤:eスポーツ版『マネーの虎』ですね。
但木:コミュニティ運営としては、「見る人」より「書きこむ人」が多いことが大事だと思っています。初歩的な質問であっても、どんどん書き込んでほしい。人は疑問に答えてあげるのが好きですし、コミュニティの活性化には「良い質問」が欠かせません。
小澤:私と松本でコミュニティのガイドラインを作成しましたが、知識やリテラシーが乏しい人を排除しないよう気をつけました。わからないことがあればまずは過去レスを参照する、それでもわからない際にはどう質問するかなど、わかっている人からすれば当たり前のことでも明文化しなければ建設的な議論はできません。
松本:「ググレカス(=自分で検索しろ)」はあえて禁止しました。先ほども話したように、検索でヒットする情報が正しいとは限らない。「Esportsの会」に集まっている一番詳しい方々に可能な限り業界の裏側や正確な知識を共有してもらえる場にしたいからです。
但木:知識をもっている人は「なんでそんなことも知らないの?」と思うこともあるでしょうが、業界単位で考えればそれはその時々に伝えてこなかった人の責任だともいえますし、情報が回る速度がさらに早くなるこれからは、そうしたことも増えるはず。だからめげずに粘り強く、情報発信を続けてほしい。
──ありがとうございます。最後に、ビジネスメディア読む人に向けたメッセージをお願いします。私も含め、eスポーツに興味はあるものの、どのように盛り上がっており、どう関わればいいかわからない人は多いと思います。
小澤:企業が参入する際にはメタ的な興行モデルばかり気にしますが、まず大切なのは実際にゲームをプレイするユーザーです。彼らは「eスポーツ」が好きなのではなく、それぞれのタイトルが好きだから遊んでいます。彼らの興味がどこにあり、なぜお金を落としているのか知ってほしい。
但木:情報量は増えているものの、なんとなく「eスポーツが流行っているらしいね」という人は大抵、実態を知りません。少し手間を惜しんで情報を探してほしいですし、メディア側はそうした人にも情報を届くようにしなければなりません。
小澤:人気タイトルには複雑な要素もあるので、面白さを理解するには実際にゲームに触れてもらうのが早いかもしれません。そうした経験を通じて、プレイヤーが何を楽しんでいるのかを、知ってほしいですね。