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──業界としての「eスポーツ」が拡大している一方で、外部ではまだ話題先行になっている。また、そうした外部に向けて噛み砕いた情報を発信するメディアもあまりいないということですね。松本さんは企業からの相談も受けているとのことですが、eスポーツに参入しようとする企業はどういった点に悩んでいるのでしょうか?
松本:一番多いのは、賞金に関する法規制ですね。現在、景品表示法による高額賞金問題は解決されてきているというのが一般的な理解ですが、インターネットで検索すると、やや古い情報がヒットすることもあります。企業が法律や文献を調べても、正しい情報を見つけるのが容易ではないのが現状です。
さらにややこしいのは、クラウドファンディングで賞金を募って大会を開催することはできても、大会参加者が出資すると賭博罪に問われる可能性があることですね。だとすればどうやってお金を募れば安全なのか。こうした分野については、私も試行錯誤しています。
ほかには、新しいビジネスモデルがeスポーツビジネス・法律の観点からうまくいくかどうか、というご相談をいただくことも多いですね。いままでにない視点での参入を試みている企業もあり、できるだけサポートしていきたいです。
起業家の荒木稜介
但木:一方で荒木さんのよう若者のeスポーツに対する興味は、とても強い。高校生から「eスポーツ業界で働くにはどうすればいいか」と連絡をもらうことも少なくありません。漠然とではあっても、何か面白そうな業界だと思っているようです。
──「Esportsの会」でも学生の方が積極的に発言されているように感じます。
荒木:たしかに周りの同世代でビデオゲームをプレイする人は、eスポーツブームを認知していますね。僕の出身高校でも最近チームを結成して、「eスポーツ甲子園」にエントリーしたそうです。しかもこれは学校が認めた部活としてではなく、あくまでゲームを好きな友人同士で自主的に結成し、大会にエントリーしたというわけです。
一方で、彼らの熱意が大人に理解されないことも少なくありません。部活を結成しようとしても、教員が顧問になってくれない、設立を認めてもらえないといった悩みもよく聞きます」
──彼らは何を入り口に「eスポーツ」を意識するのでしょうか。
小澤:普段遊んでいるタイトルが、自然と導線になります。自分のプレイしているゲームで億単位の賞金が出ると知れば、当然興味を持ちますよね。もう少しアンテナを張っている人なら、「eスポーツ甲子園」なども知ることができます。
荒木:もう一つは、実況動画ですね。なかなかクリアできない、友達より上手くなりたいと思って検索してYouTubeにある動画を見つける。そこからプロの世界を知ることになります。
但木:調査によれば、日本にはゲーム関連動画を視聴する人はおよそ2500万人いるとされています。もちろん頻度は様々ですが、人口の4分の1がゲーム動画に興味をもっている。その動機で一番多いのが、「攻略・上手くなるため」なんです。
──プロゲーマーが、攻略本の役割も担っているんですね。
荒木:とはいえ、これまでビデオゲームしかやってこなかった子がいきなりeスポーツで活躍するのは難しいですね。チームコミュニケーションや特訓を続ける胆力などの要素は、野球などのスポーツに近いと言われることもあります。
また、プロ選手以外の食い扶持を得るためには収益構造を、選手を管理する側に回るならマネジメントの知識を理解しなければなりません。eスポーツに興味をもっている学生の多くは、そこまで考えが至らないのが現実です。その障壁を下げるのが、僕の目標でもあります。