──ツイッターで発足したコミュニティが、1日で1000人規模になるのはすごいですね。何を目的にされているのでしょうか。
但木:eスポーツに関するあらゆる情報が集約され、適切な人に届く場です。企業やプレイヤー、各地のeスポーツ協会など、様々な立場の人にとって使いやすいコミュニティにしたいですね。
いまのeスポーツ業界に足りないのは、情報伝達をサポートする人材やコミュニティです。
最近のeスポーツ業界は毎日のようにニュースがあり、一般の人にはとても追いきれません。仕事としてeスポーツ関連の情報を収集していくうちに、情報発信の重要性を実感していったんです。だから私自身も、定点的に情報を観測し、まとめ、分析する人材として活動しています。
弁護士の松本祐輝
──2018年は、eスポーツにとってどんな年だったのでしょうか?
但木:いってみれば「鎖国」を解いた年でした。スマホゲームを除く日本のゲーム業界は、長らく「マリオ」「ファイナルファンタジー」といったパッケージ(ゲームソフト)で利益を稼ぐ「売り切り型」でしたが、海外では追加課金を含めたダウンロードなどによって一つのタイトルで長期的にビジネスを続けます。
これは「GaaS(ゲーム・アズ・ア・サービス)」といって、ゲームをサービスとして提供し、そのIPをもとにマネタイズするビジネスモデルです。日本のゲーム業界も、これから本格的にこのモデルをとっていくでしょう。eスポーツも、その手法の中の一つにあたります。
ですが、特に日本のeスポーツはまだ興行の収益モデルを十分に確立できていません。野球などのスポーツ事業の収益源は、主にスポンサー、放映権、グッズ収入、チケットの4つです。eスポーツはスポンサー以外の収益化は、まだ始まったばかりです。
松本: 2018年は、国内eスポーツで観戦者からチケットでお金を取る動きが出てきました。来年以降これが加速すれば、エンタメとしてもっと面白くなると思いますよ。
──トヨタが大会スポンサー、ソフトバンクがチームスポンサーになり、吉本興業はイベントの開催やチーム運営を始めるなど、ゲームとは直接関係がない企業も含めて参入が相次ぎました。
但木:一番大きなきっかけは、2018年2月に「日本eスポーツ連合」ができたことではないでしょうか。私もメディア関係者としていろいろなゲーム業界の発表に立ち会ってきましたが、設立発表時にはあらゆるメディアや大手新聞社がどっと押し寄せました。
いまでもよく覚えているのですが、質問時に日本経済新聞の方が真っ先に「今後eスポーツはどうなるのか?」と発言されたんです。この時、これからこの流れはゲーム業界にとどまらない流れになると予感しました。事実、それからは毎週のように大企業のスポンサー参入やチーム結成、リーグや番組の開始といったニュースが出ています。
Gzブレインが作成し、2018年3月に公開された総務省「eスポーツ産業に関する調査研究報告書」などの資料にも意味があったはずです。まとまった情報が一つでもあれば、経営者の意思決定は随分スムーズになります。
──企業が参入に踏み切るだけの材料が揃ってきたということですね。
松本:一方で、eスポーツという単語が先走った感もあります。オリンピックでの競技化などのキャズムを超えたものの、企業の多くは、まだ「eスポーツってなんだろう」という段階。ビジネスメディアでも、あまりeスポーツの実態には触れられていません。
小澤:「SHIBUYA GAME」もライト層の選手や業界で働いている人向けのメディアなので、外部の方に向けて業界の生態系を伝えることは完全にはできていないですね。