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夢の食べもの

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真っ赤に茹でられたズワイガニ。その太い脚を切り開くと、窮屈だったと言わんばかりにふっくらした身が現れる──。

塩もカニ酢も何も付けずにいただく。するとまず、しっとりときめ細かな、なんとも滑らかな舌触りにうっとりしてしまう。そして驚くほどあまい。ほぐれた身が口いっぱいに広がると同時に、心が幸せで満たされてしまう。塩茹でされただけでこんなにもおいしいものがあるなんて! さすがは日本一と噂される越前がに。

日本海の冷たい風が吹く福井県越前町。月刊ヤングマガジンで連載していた「海めし物語」の取材に訪れました。お目当ては高級ズワイガニで知られる“越前がに”です。


(c)高田サンコ/講談社

国産のズワイガニは、産地によって様々なブランド名があります。鳥取県の松葉がに、石川県の可能ガニ、京都府の間人ガニなど。

中でも福井県の越前がには、ズワイガニ漁の歴史の中で最も古くから行われていて、最古の記録では、安土桃山時代の日記に「越前蟹」と記されているそう。昔から日本人はカニが好きなんですね。

かくいう私も年末年始には浮かれてカニの気分になりますが、おいしいカニの食べ方や選び方は気にしたことはありませんでした。お握りサイズのカニを鍋やみそ汁でたしなむ自分が、まさかこのような高級食材について頭を使う日がこようとは。

10年以上生きた大型がウマい!

越前がには黄色いタグが付けられ、他の産地のカニと区別されます。これは、品質に自信がある証拠でもあります。

ズワイガニはおよそ年に1回程度脱皮をし、8〜10年で10回ほど脱皮したところでようやく成熟(交尾して子孫を残せるようになる)します。雌の成長はほぼそこで止まって脱皮をせずに7年以上生き、雄はさらに2、3回脱皮する。だから成体のズワイガニは雄の方が大きくなります。

ズワイガニは、脱皮から時間がたち、殻の中で充分成長して身がしっかり詰まったものがおいしい。脱皮期は秋なので、脱皮したばかりの冬の蟹は水っぽくて身の入りが良くない。つまり最終脱皮を終えて1年以上経った、つまり10年ほど生きた大型のズワイガニこそが、おいしいのです。

文=高田サンコ

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