ナイロビ襲撃事件を機に考える、個人と企業の「賢い判断」

2019年1月15日、ケニア・ナイロビで起きた襲撃現場の様子(Getty Images)


2012年1月に約20人の学生らが東北での現地調査のため来日し、災害直後に行動を起こした企業のケースとして、ファーストリテイリング、ローソン、ヤマト運輸、石巻港湾病院(現・石巻健育会病院)を運営する健育会の4社を訪問し、社長や従業員に取材を行った。

竹内教授はこのケーススタディなどをもとに、2013年に「Wise Leadership and Wise Capitalism(賢いリーダーシップと賢い資本主義)」という論文を発表しているが、その中で、4社はそれぞれのコアビジネスに基づいた領域に特化して、迅速な対応を行ったという共通点があると説明する。また、会社ではなく社会のためにという視点での判断と対応があったという結論を出している。

例えば、当時のヤマト運輸の木川社長やローソンの新浪社長は、「コストや利益は考えずに、とにかく人命を救うことを優先に決断を」と指示をした。論文では、こうした判断は、賢いリーダーの6つの要素の一つである「善の判断(Judging Goodness)」がベースになっていると説明されている。

前出のグローバル企業の判断や行動も、同様の「善の判断」がベースになっている。非常事態において、コストや利益ではなく、人命の安全や公共性が優先された判断だ。

「善の判断」は個人やジャーナリストの情報発信のスタンスにとっても、重要な要素であろう。非常事態においては、自分の身の安全や家族・知人の安否の確認は優先させるべきではある。しかし、自分の身の安全が確保できている状況であれば、公共性を考えた「賢い」判断と行動が、テロリストたちに屈しないための手段の一つかもしれない。

連載:旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」
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文=MAKI NAKATA

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