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アクセプト・インターナショナル代表理事 永井陽右

世界でいちばんいじめられている人たちを助けたい──。その一心で大学時代にアフリカを訪ねた永井陽右は、ソマリアの現状を知り、この国のテロと紛争を解決することを決心する。世界の誰もが取り組めない問題に、彼はいかにして挑んだか? 知識も経験もない大学生がギャングたちとともに歩み始めるまでのストーリー、「アンチ共感」のビジョン、そして、紛争解決に必要なマインドセット。

「それまでのぼくは『いじめる側の人間』だった」

──まずは、アクセプト・インターナショナルのミッションと活動内容について教えてください。

アクセプト・インターナショナルは、「テロを止める、紛争を解決する」をミッションとするNGOです。そのアプローチとして根幹の事業にしているのが、ギャングやテロリストを対象とした脱過激化・積極的社会復帰支援。この人権的な方法によって、ソマリアを中心としたアフリカ諸国やインドネシアで、紛争当事者たちを争いから脱退させていくことを目指しています。

フルタイム、パートタイム、学生や社会人のプロボノを含め、メンバーは現在51人。もともとは2011年に「日本ソマリア青年機構」という学生NGOから始まり、それが2017年4月に法人化して「アクセプト・インターナショナル」と名前を変えました。アクセプト──つまりギャングやテロリストといった紛争当事者を懲らしめるのではなく、彼らを受け入れるという姿勢でテロと紛争のない世界をつくってやろう、というのがぼくたちの考え方です。博愛主義というわけではなく、あくまでテロと紛争をなくすための政策的視点からこの考えに至りました。

──すべては、「ツバル」から始まったんですよね。

高校2年生の夏に、「ツバルが沈む」というニュースをネットで読んだんですよね。国が沈むと聞いて、ぼくのなかでは漫画『日本沈没』のようなイメージが膨らみ、ものすごくショッキングだった。沈没をどうにか防がなきゃと思い、当時は高校生なりに調べたりもしたのですが、結局はツバルに行く時間もお金もないまま日常に戻ってしまいます。

でもその一件以来、自分以外の他者の存在を真剣に考え始めるようになったのだと、いま振り返ってみて思います。過去に自分が何をしてきたかを考え、これから自分がどう生きていくべきかを考えるきっかけになった──それがツバルだったんです。

──それまでは「いじめる側の人間」だった、と著書やインタビューで語られています。その体験も影響しているのでしょうか。

それは、いまでも大きな軸となっています。それまでのぼくは、学校ではいじめっ子、いじめる側だった。いわば自分がゲームの主人公で、周りの人たちは登場人物だと思って生きてきたわけです。

それがツバルをきっかけに他者の存在を意識するようになり、一人ひとりが全員主人公なのだとしたら、自分はとんでもないことをしてきてしまったのだと思い始めて。その後悔と反省から「自分はこれからどう生きるべきか」と真剣に考え始めました。


永井は著書『僕らはソマリアギャングと夢を語る』(英治出版)、『ぼくは13歳、任務は自爆テロ。』(合同出版)でも、ソマリアのギャングたちと活動を始めるまでのストーリーを綴っている。

「誰もできないなら自分でやってやる」

──高校生のときにそうした気づきを得て、そこからどのように「ソマリア」というテーマに出合ったのでしょうか。

ツバルの一件から「これから自分はどう生きるべきか」と考え始めたときに、いじめていた側の人間として、これからはいじめられている側に立たなきゃいけないと思いました。そこで誰がいちばんいじめられているのかと考えていたときに、世界史の資料集でルワンダの虐殺を知り、これを止めるしかないと思い立ちます。

大学に行ったらルワンダの虐殺を止めてやろうというモチベーションで勉強し、大学に入るとすぐにルワンダで活動を行う支援団体に入りました。そして大学1年の夏にルワンダに行ったのですが、いまのルワンダはいたって平和な国だった。虐殺は20年以上前の出来事だと、そのときになって気づいたわけです(笑)。

その帰りに、せっかくアフリカに来たならいろんなところを見ようと思ってトランジット先のケニア・ナイロビに滞在をしたのですが、隣国ソマリアからの難民・移民たちが住むエリアを車で通りすぎるときにドライバーの態度が急変して。「ソマリア人はテロリストだから気をつけろ」と怒りながら言うのです。

気になってソマリアについて調べてみると、「比類なき人類の悲劇」*と呼ばれるほど悲惨な状況にあると知ることになります。地球でいちばん危険な場所と言われると同時に、他国からは「ソマリア人」という理由だけでテロリストだと思われ駆除対象になっている。いちばんいじめられている場所はソマリアなんだ、ソマリアに対して何かしなきゃ、とそこから考え始めるようになりました。

※ソマリアは1991年に起きた内戦により国土が分断し、2004年まで無政府状態が、2012年まで事実上の無政府状態が続いた。また、2011〜12年に起きた飢饉は観測史上最悪の飢饉とされた。しばしば「世界最悪の紛争地」とも形容される。


アクセプト・インターナショナルのプログラムに参加したギャングたちが自ら作成した、ソマリアのギャングの世界を描くショートドキュメンタリー『Real Gangsters』。東京ドキュメンタリー映画祭での入選が決まり、2018年12月1日〜14日、新宿ミニシアター「K’s Cinema」で開催される同映画祭で上映される。

文=宮本裕人 写真=小田駿一

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