ライフスタイル

2019.01.19 11:00

観光資源としての「武道ツーリズム」 先人の精神性を再発見するきっかけに

(写真:KENDOFAM)

(写真:KENDOFAM)

2020年の東京五輪を控え、訪日外国人の数は右肩上がりで増加している。政府は2020年までに4000万人を掲げているが、ここ数年で訪日外国人は増加の一途を辿っており、2018年12月に3000万人を突破したと報じられた。

日本を訪れる外国人観光客の楽しみには、食や文化観光などの他に「体験型」のツーリズムがある。例えば、アウトドアスポーツだ。日本各地には海・山・川・湖などの豊かな自然があり、アウトドアを通してその地域ならではの景観・雰囲気・文化など様々なことが体験できる。しかし、ウィンタースポーツや自然体験の他、日本にしかないコンテンツとして注目を集める分野がある。「武道ツーリズム」だ。

世界の関心が高い、日本発祥のスポーツ「武道」

スポーツ庁は2017年、武道ツーリズムの促進を宣言した。武道ツーリズムとは、発祥の地である日本でしか体験できない、スポーツと文化(伝統文化・精神文化)が融合した、希少性の高いコンテンツだ。武道や武術の見学、観戦、体験、施設見学などが含まれる。

前回の記事で紹介したように、海外ではその精神性に惹かれて武道を始めるケースがある。他に、漫画やアニメの影響などもあるが、教養層や知識層は古くからの武士の考え方を取り入れ、人生を豊かにするために実践している。

全日本剣道連盟は、剣道の理念を「剣の理法の修錬による人間形成の道」としている。人間形成を究極目的として行う心身の修養であるため、「スポーツではない」という見方もある。

しかし、剣道をはじめとした武道に国内・国外問わず興味を持ってもらうためにも、エンターテイメント性、レクリエーション性を備えたコンテンツを提供することは非常に重要だ。スポーツ庁は、これを”BUDO”と定義している。

「体験」だけではない、「見て」楽しむ観光

スポーツ庁の資料によると、外国人観光客が「日本で経験してみたい『みる』スポーツ」として、「大相撲」と「武道」の人気が高かった。必ずしも「武道をやってみたい」というニーズが高いわけではない。むしろ“見て”楽しむ観光が求められているのだ。


(写真:著者撮影)

私はオランダで剣道を1年半ほど続けており、様々な国の剣士と触れ合ってきた。その中で特に女性に多かった声に、「武道には興味があるが、身体的な接触に抵抗がある」というものがある。日本文化に興味を持って柔道や柔術を始め、のちに剣道にスイッチした女性からは「剣道は防具に守られているから身体的接触が少ない」と言っていた。武道に興味があるが、体験するには勇気がいるという人も多い。
次ページ > 自国では体験できない非日常

文=佐藤まり子

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事