日本は「マザーズ」という市場があることから、時価総額が数十億円の段階で上場する。いわゆる、「スモールIPO」を目指すスタートアップが多く、それが結果的に日本からメガベンチャーを生み出せない要因のひとつになっている。
事実、アメリカの調査機関が発表した、世界220社のユニコーンの内訳を見ると、ほとんどがアメリカもしくは中国の企業。アメリカは109社で全体の49.5%を占め、中国は59社で全体の26.8%を占めている。
日本のユニコーン企業は過去、DMM.com、メルカリ、プリファードネットワークス(PFN)の3社しかいないと言われている。
政府が閣議決定し、新たな成長戦略として掲げた目標「2023年までに20社のユニコーンを創出する」を達成するには、メルカリのような企業をどれだけ多く生み出せるか、が大事になってくるだろう。
メルカリ上場後のスタートアップ・エコシステムについて、投資家たちはどう考えているのか。今回、話を伺ったのはメルカリにも投資し、Forbes JAPANの「日本の起業家ランキング」の評価委員でもあるグローバル・ブレインの百合本安彦。
「メルカリ、ラクスルへの投資が一過性の投資と思われないようにしなければいけない」と語る百合本。彼が考える、ポスト・メルカリ時代とは──。
分散化の波が押し寄せ、「FinTech2.0」が来る
ポスト・メルカリ時代について、私が考えていることを、いくつかの視点から話します。まず、メルカリが創業から5年で時価総額6760億円で上場したことは、グローバルに見ても上位のランキングに入ると思います。これまでグローバルな投資家からは、アウトオブスコープ(対象外)だった日本のスタートアップやベンチャーキャピタル(VC)が、出資対象のターゲットして認識されたことは、大きな前進だと思います。
実際、弊社にも海外の機関投資家からファンドへの出資可能性について照会が入るようになりました。それと同時にベンチャーキャピタルとしては、メルカリ、ラクスルへの投資が一過性の投資と思われないように、メルカリ、ラクスルに続く有望なスタートアップの発掘、育成に力を注ぐ必要があります。
もちろんプレッシャーもあります。「グローバル・ブレインは偶然、メルカリとラクスル の投資がうまくいった」と思われたくないですから(笑)。そういう意味で、次のファンドのパフォーマンスが非常に大事になってきますし、周りから「安定して良いパフォーマンスを残すベンチャーキャピタル」と思われるようにしていかなければ、と思います。
具体的な投資対象領域としては、メルカリによってCtoCつまり分散化の波が怒涛のように押し寄せ、新しい経済圏が発展しつつあります。
「Fintech2.0」と言ってもいいと思いますが、この経済圏を構成するクラウドファンディング、時間通貨、価値評価、トークンエコノミー、シェアリングエコノミーに関連するベンチャーへの投資を加速していきたいと思います。