続けて、選択式のアンケートをいくつか実施し、あわせて6986件のママの声を集めました。その結果、判明したのは約90%のママが「働きたい」と思っていることです。もうひとつ分かったこともあります。それはママたちが強く求めているのは、彼女たちが受け入れられる「雰囲気」だということです。
──雰囲気、ですか。
大湯:こちらは現在、仕事をしていないママたちが勤務先に対して求める要素です。通勤のしやすさ(アクセス面)や産休・育休のとりやすさといった制度面はもちろんですが、それ以上に彼女たちが大事にしているのは、「妊娠や育児に対して理解がある」「シフトや勤務時間の融通がきく」といった、周囲からの理解だということがわかりました。
また再就職に対する不安として多くのママが感じているのは、「子供が急病のときに休めるか」「仕事と育児の両立ができるか」ということです。「保育園などの預け先を確保できるか」は、実は6割弱のママしか不安に思っていない。ネット上で「保育園落ちた、日本死ね」という匿名ブログが大きな反響を集めましたが、子どもの預け先以上にママが再就職する際に不安の思うのは、有事の際にすぐ対応できるかどうかなんです。
例えば、弊社で働いているママでも出社して1時間後に保育園から電話がかかってきて、子どもを迎えに行くといったことが起こったりすることもあります。こうした対応ができるかどうかは、上司や同僚が「代わりにやっておくから、子どものところに行ってあげなよ」と言ってくれればいいわけです。制度をつくる企業も多くありますが、言いづらい雰囲気によってママが制度を活用できなければ元も子もありません。
ここから私たちは、ママたちが安心して働くために必要な要素の一つとして、子持ちで働いている自分たちを受け入れてくれ、何かあった時に欠勤や早退を許してくれる職場の「雰囲気」が重要だと行き当たったんです。保育園の数など、設備面や制度面を変えるのは大変ですが、職場の雰囲気であれば少しずつアプローチできますからね。
──制度の充実よりも、社員が制度を利用しやすい雰囲気をつくることが大事だと。
湯浅:「変えよう、ママリと」の目的は、新しく制度をつくることではなく、現状の制度を変えることでもなく、より活用しやすい雰囲気を醸成することを目標にしています。
大企業でもベンチャーでも、ママが働きやすい環境はつくれる
──多くの企業はママが働きやすい環境をつくりたいと思っているはずです。なぜ実現できないのでしょうか?
大湯:私たちの話をすると、現在、コネヒトには約70人の社員がいます。そのうち女性比率は63.4%で、パパ・ママは37人います。まだ社員が50人規模だった頃、10人近くが同時に育休に入るなど、ママが働きやすい職場環境をつくれていると自負しています。
私たちも特別に大がかりな福利厚生を導入したり、というわけではありません。ママが働きやすい職場環境をつくるためには、ママたちをそれだけで良くも悪くも特別視しないこと、そして雰囲気の醸成が重要だな、と思います。
例えば、コネヒトでは過去に時短勤務を希望する元大手人材会社出身の女性が面談にいらっしゃいました。話してみると彼女はとても優秀で仕事ができると感じたのですが、「時短勤務」というだけでなかなか内定が得られなかった。そういった状態のママたちを見てきて、とても勿体ないなと。私たちはそうしたママたちを採用しています。彼女たちはとても優秀で、会社の成長に貢献してくれています。
また、会社ではユーザーのことを考え抜いてサービスを作るというカルチャーを浸透させたことで、子どもを優先しても大丈夫な雰囲気ができあがり、ママの働き方にみんな理解を示してくれています。
これはママリを運営しているコネヒトだから、あるいはベンチャーだからできたことではありません。どんな企業であっても、姿勢次第でママが活躍できる企業になれます。今回の「変えよう、ママリと」は人材会社と連携し、ママが働きやすい雰囲気をつくることが目的です。