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g-stockstudio/ GettyImages

近年、利益よりも社会課題の解決を目的にする起業家「ソーシャルアントレプレナー(社会起業家)」が増えている。彼らに対して、長いキャリアを持つ投資家はどう考えるのか。そして、彼らは何を基準にして投資の判断を下すのか。

全世界で3000万部以上を売り上げる『金持ち父さん 貧乏父さん』の「金持ち父さん」のモデルで、実際に投資家として活躍しているロバート・アレンと、祖国ネパールの教育を変えるため、ソフトバンクで働きながら、双方の国のNPO法人の代表としても活動するシャラド・ライが互いの意見を交わした。

彼らの視点の一致、あるいは相違からは、投資家や起業家に必要な資質が見えてくるはずだ。


シャラド・ライ(左)、ロバート・アレン(右)

まず「Giver」になれ

シャラド:僕は故郷のネパールに、カーストを気にせず日本のような質の良い教育を受けることができる学校「YouMe(夢)School」をつくりました。

ですが、毎月の授業料からだけでは教員の給料を払うことも難しく、今は日本からの寄付と援助で成り立たせています。

ネパールの公立学校では、先生が遅刻したり欠席したりするのは当たり前。日本のようなきちんとした授業はほとんど行われていません。ロバートさんには、この状況を変える手助けをしてもらいたいのです。

ロバート:なるほど、立派なビジョンですね。ですが、正直言ってそのお話では私はあなたに投資をしたいとは思えません。

あなたもそうですが、ソーシャルアントレプレナーとはお金だけでなく社会貢献を目指して事業を立ち上げる人々です。それは一般的な起業家も同じ。彼らは金銭的な利益がメインの目的かもしれませんが、誰かに利益をもたらすという意味では同じですから。

大事なのは、giveの精神です。人を動かし、利益を産むためには、まず誰かに何かを与えなければいけません。あなたは、ネパールの子どもたちに教育の機会を与えたいのでしょう? それと同じです。

投資家を動かしたいなら、私たちに何かを与えてください。私があなたにお金を渡すことで、お互いにハッピーになれる。そんなWin-Winの関係を構築したいのです。

「投資家の言葉」を使え

シャラド:確かにその通りですね。YouMeNepalの最初の学校はネパールの中でも街から車で10時間以上かかる電気も水道もガスもない田舎の山の上にあります。

10歳を過ぎれば家の農業をして学校に行かないのが当たり前。子供たちの未来を変えるため教育を変えようと学校を作りましたが、その学校を経営、維持することはとても大きな課題でした。

そんな中、昨年は沢山の方々の支援により、大きな都市に新しく2校目の学校を建てることができました。そこでの収益を含め、やりくりしようとしているところです。

今は立ち上げたばかりなので、状況はそれほど好転していません。数学や英語などを教えることのできる教員が少なく、僕が理想とする授業を行うまでには問題が山積みです。もし、あなたが資金やネットワークを提供してくれれば、それらの問題は一気に解決すると思います。

ロバート:ネパールの教育が豊かになって世界が幸せになるのは、私にとっても喜ばしいことです。ですが、そういうことではありません。投資家にプレゼンをしているのですから、あなたには「投資家の言葉」で話してほしいのです。

先ほども話したように、一般的にソーシャルアントレプレナーは課題解決を重視し、投資家は利益を重視します。投資家である私に何かをもちかけるのならば、私が好む言葉を使ってください。

「課題解決をしたい」だけでは、投資家の心にはなかなか響きません。

例えば、「学校のカリキュラムでロバートさんの本を使います」と言ってくだされば、私にとっても大きなプラスですよね。金銭面でのリターンを確約しろと言っているわけではありません(もちろん、できればリターンは欲しいのですが)。

実際、起業家になる方法を子どもたちに教えることは、ネパールの発展に取っても悪くないアイデアだと思いますよ。

とにかく、どのように事業を伸ばし、それによってこちらにどのような利益がもたらされるかという、サクセスストーリーをしっかり描いてほしいのです。

文=野口 直希

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