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フリーランスのライター・編集者

Impossible Burgerは、米ハンバーガーチェーン「UMAMI BURGER」で人気メニューの一つとなっている(Getty Images)

「ミートテック(Meat Tech)」と呼ばれる食肉分野のイノベーションは、シリコンバレーで今最も熱い分野の一つ。植物性の素材から肉に近い味を再現した「プラントベース(PB)ミート」と、動物の細胞を培養した人工肉「クリーンミート」のスタートアップが、伝統的な食肉市場を破壊しようとしている。

9月はじめ、この分野で先導的な取り組みを行っている米NPO「The Good Food Institute(GFI)」のアイロン・スタインハートに、肉の未来について話を聞いた。

──まず、現在私たちが普通に食べている動物由来の肉にはどんな問題があるのでしょうか?

現在の食肉の生産システムを考えると、主に4つの大きな問題があります。

1つ目は環境問題。畜産業は膨大な温暖化ガスを排出しています。国連の調査によると、畜産業による二酸化炭素の排出量は交通インフラ全体より40%も多いとされています。

2つ目は貧困問題。世界の人口の10%は飢餓にあるとされています。その原因の一つは、大量の食糧が人ではなく、家畜のエサとして消費されていることです。先進国の肉の需要を満たすために、途上国の人々の食糧が奪われているのです。

3つ目は動物福祉の問題。人々の食欲を満たすために多くの動物たちが毎日殺されています。また殺されなくとも、非常に劣悪な環境で飼育されているのが現状です。

4つ目は健康問題。肥満や糖尿病、高血圧など現代病の多くは、動物性食品の過剰な摂取が一因となっています。

──なるほど、どうすればこれらの問題を解決できるのでしょうか?

PBミートやクリーンミートといった「代替肉」はこの4つのすべてにおいて、動物ベースの肉よりも優れています。

まず環境問題については、温暖化や水質汚染などの心配がほとんどなくなります。代替肉は見た目も味も調理法も、従来の肉とまったく同じ(クリーンミートにいたっては完全に肉そのもの)ですが、環境への影響は最少に抑えることができます。

貧困問題については、これまで家畜のエサとなっていた食糧を人間にまわすことができます。現在、全世界の耕作地の80%は、家畜に与える食糧を生み出すために使われています。これを人間のために有効活用できるようになるのです。

動物福祉については、PBミートやクリーンミートなら、そもそも動物を飼育する必要がありません。

最後に健康面。畜産業では細菌による汚染が発生しやすく、それを防ぐために大量の抗生物質が使われているのが現状です。ですが、クリーンミートなら、ビールの醸造所のように、細菌や抗生物質とは無縁の衛生的な環境で培養できます。一方、PBミートは植物性なので本質的に体に良いです。またタンパク質など栄養分の量をコントロールできるので、栄養価の面でも優れています。

──環境や貧困問題などを解決するテクノロジーというお話ですが、なぜ企業からも注目されているのでしょうか?

米食品大手タイソン・フーズから、有名投資会社DFJ(ドレイパー・フィッシャー・ジャーベットソン)まで、多くの有力企業がミートテックに関心を寄せているのは、非常に有望な可能性を秘めているからです。

まずPBミートやクリーンミートなどの代替肉は、従来の動物ベースの肉より、はるかに効率的に食肉を生産できます。

たとえば食肉の生産効率を、カロリーの転換率という点から見てみましょう。

鶏肉は、カロリーの転換率が最も優れている肉とされています。それでも9カロリーのトウモロコシから、平均1カロリーの鶏肉しかとれません。比率にして9:1です。植物を肉に転換する過程で9割近いカロリーが失われることがわかります。

ほかの肉はさらに転換率が悪く、豚肉なら15:1、牛肉なら25:1です。食肉を生産するために、いかに多くの植物が餌として消費されているかよくわかると思います。

文・写真 = 増谷康

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