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2018.10.28

「異性愛者のゲイへの嫌悪感は同族嫌悪に近い」 リンクトイン村上臣が差別問題を語る

リンクトイン日本代表 村上臣(左)、東京レインボープライドの共同代表理事 杉山文野(右)

自身もトランスジェンダーで、今年15万人を動員した日本最大のLGBTプライドパレードを運営するNPO法人・東京レインボープライドの共同代表理事を務める杉山文野と、リンクトイン日本代表の村上臣の対談連載後編。

前回、ヤフーでのダイバーシティ施策やリンクトインでの活動を明かした村上。彼が考える、日本社会に蔓延する差別の「根源」とは──。

「LGBTを認められない自分」を認める

杉山:村上さんはいつからダイバーシティを受け入れる考え方をされていたのですか。
 
村上:中高生の頃でしょうか。小さい頃から女の子たちに混じって遊ぶのは好きでしたが、中学生からは吹奏楽部で女子社会の中で過ごしていました。

部内でワクワクしながら『花とゆめ』を回し読みしたり、『ぼくの地球を守って』の話をしたりしていた。なので、相当馴染んでいたと思いますよ(笑)。

女子と遊ぶことが多かった半面、男子にはいじわるもされました。友達と一緒に帰るだけで「付き合っているのかよ」とからかわれ、白い目で見られることも多かった。

それを真正面から受け止めても、意見の違いを変えることはできない。当時から「人それぞれ」と考え、軸をずらして接していました。
 
杉山:「女子社会の中の男子」として、マイノリティの生き方を学んだわけですね。

村上:LGBTを認識するようになったのは、大学でゲイの友人ができたときですね。当時はなかなか彼らを認めることができなかったのですが、彼らと長く接するうちに段々考えを改めるようになりました。

「ゲイの人も、自分とあまり変わらないんだ」と思ったら、それまであった抵抗はなくなりましたね。
 
杉山: 社会全体がLGBTを「違うもの」「悪いもの」という印象を強めていたことも、個人の偏見を深める一因ですよね。僕も、自分がトランスジェンダーであることを受け入れられない時期がありました。自分は男だという想いと、社会によるトランスジェンダーへの偏見で、素直な気持ちを認めることができなかった。

当事者が自分の感情に向き合おうとしても、社会の刷り込みのせいで自分自身を「いけないもの」だと否定してしまうことは、本当につらいことだと思います。
 
村上:異性愛者のゲイに対する嫌悪感は、同族嫌悪に近いのではないでしょうか。ゲイの存在を認めると自分の中にもある「悪いといわれている」感情を暴かれるようで、居心地が悪くなってしまう。

ゲイの友人の感情も理解できると認めてからは、ずいぶん楽になるはずです。ゲイを理解する自分を認めることで、ようやく他人のことも認めることができるようになるのではないでしょうか。
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文=野口直希 写真=山田大輔

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