「服にお金を使う体験」の価値を高める
──御社のブランド戦略をお教えください。
ブランドメッセージを一言で言うなら「自信を持ってほしい。」です。
私は、どれだけ技術が進歩しても無くならない感情の一つが「コンプレックス」だと思っています。その「コンプレックス」に対してつけこむのではなく、少しでも薄められるようなサービスに取り組みたいと考えています。
そのため、私たちの商品を買うことによって自尊心が高まってくれたらいいなと思っていますし、弊社の商品を買うことで、「自分が大事にされている感」を持ってくれたら大成功です。
そのために、誕生日に購入いただいた方には手書きのメッセージをつけたり、購入の一週間後にフォローのDMを送るなど、高級ブランドで行われるような細やかな体験を提供するよう心がけています。うちのような中価格帯ブランドでそこまでやっているのは珍しいと思います。
私自身も原体験として、「新宿伊勢丹の好きな担当の出勤日に買いに行く」など、合理的には説明できないような買い物の仕方をしてきました。そういった非合理を引き起こした原体験を文字に起こして、再現性がある部分を抽出して実施するようにしています。
実際、弊社のユーザーは、他ブランドとの比較ではなく、「他趣味・娯楽との比較」で購入していただける方が多いんです。なので、丁寧にケアをして、「大切にされている感」を醸成することが、二回目、三回目の購買に繋げるのに効果的になっています。
──ブランド価値を広めるために重要視されているポイントはどのようなことでしょうか?
ブランドとしてお客様に何が誠実かというと、間口を広めておくことだと思っています。そこでの、キーワードは「読解力への理解」です。
「読解力への理解」の一例を挙げると、通販サイトにメニューのことを「MENU」と書いている場合がありますよね。その際に「『MENU』と英語で書くと読めない人がいる」というところに理解が及ぶと、表現の方法が変わってくるはずなんです。つまり、「この表現で伝わるかな」「この表現で不安を煽らないかな」ということに気を配っています。
例えば、靴で「ヒールの高さが9cm」とだけ説明するのではなく、「クッションが入っているので、ギリ走れます」といった表現なら理解いただけるかもしれません。
特に写真や動画でのコミュニケーションが主流となっている若い年齢層は、想像以上に文章が読めない・読まない人が多いと感じています。そういったユーザーの「読解力への理解」と、その読解力に合わせる形での発信が、ブランドの価値を広めるために重要だと思っています。