子宮はバグじゃない! 数字が示す「企業に女性が必要な理由」

イラストレーション=ジャコモ・バグナラ


同時に、そこには「戦う少女の気風」と呼ぶべきものが存在する。
 
男子に負けないアスリートだと見なされるためには男子以上に頑張らなければならないという社会的プレッシャーにさらされてきた女子たちは、ケガをしても欠場しようとしないのだ。そう、靱帯断裂から復帰する女子中学生は、職場復帰する母親たちとそっくり同じように、「もう一度能力を証明してやる!」という心持ちでいるのである。
 
ある学校の陸上部のトレーナーはこう話した。「男子のほうが従順ですよ。座ってろと言えば素直に従います。女子は競技に戻りたがる。テーピングをして、競技を続けさせてくれと私にせがむんです」。
 
この「戦う少女の気風」が彼女らを危険にさらす。なぜなら彼女たちは、ケガが完治する前に戻ってくるからだ。さらに危険なのは、少女たちが絶え間のない痛みに「慣れて」しまい、大きな問題の予兆を無視したり、痛みを抱えたままプレーを続けたりすることだ。
 
女子スポーツだけの問題ではない。
 
米国陸軍の基礎訓練(2カ月かけて新兵を肉体的な限界まで追い込む)における負傷率の調査にも、興味深い類似点が見られる。20年以上前から行われてきた多くの研究によって、女性の負傷率は男性よりも高いことが示されている。特に目立つのは下腿部の疲労骨折だ。
 
だが同時に、大規模な調査が示唆したのは、女性は負傷の頻度も高いが、タフでもあるということだ。女性は比較的大きなケガをしないと退役しない。しかし男性は弱い。比較的軽い症状であっても辞めていく。
 
ここで家父長制が登場。マイケル・ソコロフの記事はこう続く。「スポーツ界や軍隊では、女性は新参者だ。どちらの世界でも、自分がそこにいる資格があると証明するために、女性たちが『耐え抜いて』いるという面があるのかもしれない」
 
同等以上に頑張らないと対等だと見なされないなんて、おかしなことだとは思う。しかし女性が中学生のころからそれに慣らされてきたという事実は、女性の投資家や起業家が平均して男性を上回る成績を挙げていることの1つの理由なのかもしれない。

母性が鍛える4つの「筋肉」その3: 解き放たれた創造性

スタミナや生産性が増すことは素晴らしい。おかげであなたは、より長い時間頑張ったり、同じ時間を最大限活用したりすることができるようになる。
 
ただ、それらはただの「腕力」だ。
 
私が母親になっていちばん驚いたのは、仕事の質もまた劇的に向上したことだった。私の最高傑作のうちの何本かは母親になってから書いたものだし、書き上げる速度も速くなった。創造力が高まるよう脳を配線し直したかのようだ。
 
この一因は「制約の魔法」だろう。
 
創造性とは、必要な時間や資源がないときに、それに立ち向かうための手段なのだ。これは最初のふたつ以上に価値の高いスキルかもしれない。
 
エアビーアンドビーのブライアン・チェスキーCEOは、母親でもなければ父親でもないが、彼の語ったエピソードは示唆に富む。ブライアンが美大に入学した初日、教師は生徒全員に自画像の制作を命じた。彼らは丸1週間の苦行の末に、なんとかそれを提出した。すると次の課題は、同じ日数で200点の自画像を描くことだった。
 
ブライアン曰く「明らかに時間不足だった。けれど肝心なのは、一見解決不可能に思えても、創造性があれば常に方法は見つかるってことだ」。
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文 = サラ・レイシー 翻訳 = 町田敦夫 編集 = 杉岡藍

この記事は 「Forbes JAPAN 100通りの「転身」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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