子宮はバグじゃない! 数字が示す「企業に女性が必要な理由」

イラストレーション=ジャコモ・バグナラ


事実、性多様性の高い企業のほうが成長率が高い
 
母親を含む女性たちが、起業家や経営者、従業員としての高い能力をもつことは、理論や逸話の域を超え、豊富なデータで裏付けられている。
 
ファーストラウンドキャピタル(ウーバー、バーチボックス、スクエア、ブルー・エプロンほか数百社の有望スタートアップに初期投資をしてきたVC)は2015年、自社の内部データをまとめたレポートを公表した。驚くべき発見のひとつは、同社の出資先のうち、女性創業者のいる企業は、男性のみで創業された企業に比べて63%パフォーマンスが高かったという事実だ。
 
同様に、起業家支援・育成で世界最大の米カウフマン財団も、女性のIT起業家は男性の同業者よりも平均で35%高いリターンを生み出したと報告している。
 
ウィメンVCという団体が明らかにしたのは、女性のベンチャー投資家もまた、平均すると男性の同業者より好成績を挙げているという事実だった。彼女たちが、ヘルスケアやeコマースといった、比較的リターンの低い分野への投資に追いやられることが大半であるにもかかわらずだ。
 
また、複数の調査において、女性が率いるスタートアップのほうが生存率が高く、より大きな利益や収益を挙げていることが証明されている。BNPパリバが行った調査では、35歳未満の女性起業家が平均以上の成功率(と野心)をもつことが、特に強調されていた。
 
この傾向はスタートアップの世界に限らない。
 
マッキンゼーは、ジェンダー多様性に優れた企業が、競合企業を15%アウトパフォームしていることを発見した。インテルと戦略コンサルティング会社ダルバーグの研究では、ひとりでも女性の重役がいるIT企業は、男性だけの経営陣を抱える企業に比べ、16%高い企業価値を有することが判明している。HRコンサルティングのバーシン・バイ・デロイト社のリサーチチームは、多様性プログラムが成功すれば、従業員1人当たりのキャッシュフローが2.3倍になる可能性を指摘している。
 
ゴールドマン・サックス、クレディ・スイス、モルガン・スタンレー、カタリスト、世界経済フォーラムなどの調査でも、ジェンダー多様性に優れた企業のほうが、より大きな財務的利益を得ることが数値として示されてきた。
 
マクロ経済のレベルでは、米国議会の合同経済委員会が、この40年間に女性がパワフルに労働市場に参入していなければ、米国の経済規模はいまより2兆ドル小さかったと明らかにしている。また、米国統計局によれば、女性が所有する企業は米国内で合計約1兆6,000億ドルの収益を生み出している。マッキンゼーは、労働人口における両性の平等を推進すれば、世界経済がさらに12兆ドル成長する可能性があるとした。
 
この手の話はまだまだ続けられる。だが、もうおわかりだろう。
 
データは、「母親の壁」の偏見も、性差のバイアスも、家父長制の願望も、その他のいかなる嘘も裏付けない。
 
覚えておこう。母であることを通じて身につけた強さは、さまざまなかたちであなたのキャリアにプラスになる。
 
母性が鍛え、発達させる「筋肉」は主に4つ。生産性、スタミナ、創造性、共感的なマネジメント。これらはほぼすべての職業に必要な資質だ。母性はあなたをより優秀なリーダーにし、より優秀な従業員にもする。起業するつもりがなかろうと、フルタイムの仕事に復帰するつもりすらなかろうと同じ。育児を通じて身につけたこの4つの筋肉は、同僚たちよりもずっとあなたを有能にしてくれる。あなたはただ、自分自身の力を信頼するだけでいい。
次ページ > 母性が鍛える4つの「筋肉」 その1: 生産性

文 = サラ・レイシー 翻訳 = 町田敦夫 編集 = 杉岡藍

この記事は 「Forbes JAPAN 100通りの「転身」」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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