経済・社会

2018.09.06 06:00

女性客レイプ殺人でIPOも延期、中国「滴滴」のアプリDL数急落

中国「滴滴」のアプリ(Piotr Swat / Shutterstock.com)

中国「滴滴」のアプリ(Piotr Swat / Shutterstock.com)

中国の配車アプリ最大手「滴滴出行」を利用した女性客がドライバーに殺害される事件が相次いで起き、同社は厳しい批判にさらされている。

先日、滴滴出行の相乗りサービス「順風車(ヒッチ)」を利用した20歳の女性がドライバーにレイプされ殺害されたことを受け、当局は同社に管理体制の見直しを命令した。同様の事件が過去3カ月で2回起きており、滴滴は公式に謝罪すると同時に幹部2人を解雇し、ヒッチの無期限休止を発表した。

アナリストらは業績へのダメージが長期化すると指摘している。滴滴の創業者の程維(Cheng Wei)と社長の柳青(Jean Liu)は、「痛切なお詫び」と題した謝罪文の中で次のように述べた。

「今回の悲劇により、我々に尊敬の念や謙虚さが不足していたことを痛感しました。我々はうぬぼれ、設立当初の信念を忘れていました。この数年は、息を継ぐ間もないほどのスピードで事業を拡大してきましたが、人命を失う悲劇に直面し、これまでの努力が無意味であったと感じています」

国民の多くは、滴滴の謝罪が口先だけのものだと批判し、同社のアプリを削除する動きも広まっている。App Annieのデータによると、今回の事件が起きてから中国のiOSストアにおけるダウンロードランキングで滴滴は11位から61位へと大幅に順位を落としている。

アプリの削除運動も勃発

中国版ツイッター「ウェイボ(新浪微博)」では、セレブたちがこぞって滴滴アプリを削除するスクリーンショットを投稿しており、先週は女優の王晓晨(Wang Xiaochen)が画像に「グッドバイ」というキャプションを付けて投稿して29万件の「いいね!」を獲得した。

滴滴は直近の資金調達ラウンドにおける評価額が560億ドル(約6.2兆円)に達し、IPOを計画していたと伝えられる。同社は中国の競合を打ち負かし、日本やメキシコで配車サービスを立ち上げるなど海外進出を加速させていた。しかし、今回の不祥事を受けて同社の成長プランは大幅な後退を余儀なくされるだろう。

滴滴は、中核事業である配車サービス以外にも、シャトルバスや通勤乗り合いサービス、プレミアムリムジン、自転車シェア、フードデリバリーなどを5億5000万人のユーザーに提供している。同社によると、1日当たりの配車件数は3000万件で、ヒッチだけでも過去3年で10億件を配車しているという。

コンサルタント会社、「iiMedia Research」のZhang Yiは、乗客の殺人事件は投資家マインドに大きな影響を及ぼすと指摘する。「IPOは売上と成長性が全てだ。ヒッチが当面休止となれば、売上は大きな打撃を受ける」とZhangは話す。

地元警察によると、殺害された女性の友人が滴滴に救助を求めたものの、対応するまでに数時間を要したという。5月にも客室乗務員がヒッチを利用中に殺害され、同社はアプリ上の緊急ボタンをリニューアルし、ドライバーが乗客の詳細プロフィールを閲覧できなくする対策を講じていた。
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編集=上田裕資

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