ビジネス

2018.07.23 07:30

ふるさと納税「返礼品競争」から脱却した神戸市の新たな施策

谷上駅構内に開設したコラボレーションスペース「.me(ドットミー)」


神戸市が、起業家支援として「ふるさと納税」と連携したクラウドファンディングを始めたのは、2年前の2016年。全国初と注目されたが、当初は8社の起業家と目標の1000万円に対して、集まったのはわずか67万円だった。
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失敗の原因は明白だった。優れたビジネスプランを持つ起業家たちは、ベンチャーキャピタルから数千万円単位の投資を得ることが目標で、数百万円をわざわざクラウドファンディングで集めることなど考えておらず、その動機が弱かったのだ。

民間プロジェクトへ「ふるさと納税」適用

谷上プロジェクトでのクラウドファンディングの動きを察知した神戸市は、そこで2年前に失敗した枠組みを復活させた。谷上プロジェクトの「日本をワクワクさせる『挑戦と変化』が生まれるコミュニティづくり」という旗印が、倦怠感漂う現在にあって、多くの人々の共感を生むと判断したのだ。
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そして、なにより、発起人の山本敏行さんをはじめプロジェクトメンバーたちも「本気で」資金を集めようとしていた。

注目すべきは、「谷上プロジェクト」が民間のプロジェクトである点だ。基本的に民間主導プロジェクトに「ふるさと納税」は使えない。一方で、自治体主導の特定プロジェクトに「ふるさと納税」で資金を集めようとすれば、そもそもの税金を財源にして予算化すればよいと判断されがちで、人々の共感が得られにくい。

この問題を解決したのが、自治体の方向性に合致した民間プロジェクトへの「ふるさと納税」の適用だ。神戸市は、プロジェクトを公募し、外部有識者による審査会で自治体施策との適合性を審査することで、公平・公正性を担保した。現実に谷上プロジェクトで資金集めに成功したこのモデルは、自治体施策の新しい進め方としても注目を集めている。

連載:地方発イノベーションの秘訣
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文=多名部 重則

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