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山本敏行 ChatWork CEO

マイクロソフトやグーグルといった有名企業や新興IT勢がしのぎを削るビジネスチャット・サービスで、日本発スタートアップとして健闘するChatWork(チャットワーク)。全国で17万社以上(2018年3月末日時点)が導入し、シリコンバレーや東南アジアなど海外にも展開する同社は、2017年11月、ハンバーガーチェーンも撤退してしまった神戸市郊外の谷上駅ビルに本店を設置し、町づくりプロジェクトを始めた。

「なぜビジネスチャットの会社が町づくりをするのか」。同社の取締役会でも異論が相次いだという「谷上プロジェクト」だが、同社CEOの山本敏行に賛同する若い起業家が相次ぎ、すでに9社が谷上で登記。谷上駅ビル内のコラボレーションスペース「.me」の開設・運営費用を募るクラウドファンディングは、行政もふるさと納税制度を使ってバックアップし、2か月弱で200人以上から2000万円に上る寄付を集めている(5月1日まで)。

「グローバル大企業がやらないことをやらないと勝てない」

こう断言する山本は、賛同者が続々集まる町づくりに日本発ビジネスチャットのさらなる飛躍の可能性を見据えている。

メガバンクを辞めて谷上に移住

チャットワークから「町づくり」業務を委託されている森脇暉は、新卒で入った三井住友銀行を2017年10月に辞職。翌11月1日、谷上駅の駅ビルの一室に会社を登記、まだ内装もないその部屋で起業した。

神戸市北区の谷上駅は、六甲山系の北側に位置する。山陽新幹線・新神戸駅で北神急行電鉄に乗り換え、六甲山系を南北に貫く全長7276メートルの北神トンネルを抜けると、山本が「天空の街のよう」と形容する、山に囲まれた谷上の町が広がる。谷上駅には北神急行電鉄のほかに、神戸電鉄有馬線も乗り入れる。阪神高速7号北神戸線の沿線でもあり、神戸港や神戸空港からも近いが、駅前にはマンションやビルが数棟、周辺に戸建の家や商店が並ぶ静かな住宅街だ。

森脇の出身は山口県下関市豊北町。谷上には縁もゆかりもなかったが、移住から数か月で町の自治会長や消防団長らに名前を覚えられ、地元の集まりに呼ばれるようになった。町づくりの業務では、クラウドファンディングで募っているコラボレーションスペースの開設作業のほか、開設イベントの実施、谷上駅近くのホテルと共同した旅行ツアーの企画なども行なっている。

もともと、「5年間銀行員をしたら退職して衰退している地元(下関市)で起業したいと思っていた」という森脇。銀行員4年目となった17年5月、二週間の有給を取ってシリコンバレーを視察する際に、相談をしたのが山本だった。大阪市で2004年に現チャットワークを創業した山本は、12年から17年7月に日本に帰国するまで、シリコンバレーに滞在。二人は意気投合し、その後も連絡を取り続けていた。

事態が急展開したのは17年9月。山本がシリコンバレーから帰国し、谷上に常駐してプロジェクトを企画運営する人物を探すなかで、抜擢されたのが森脇だった。「電話で突然、谷上に行かないかと言われました。山本さんと会ったのは1回だけだったんですが、『情熱だけで地元(下関市)に戻っても、線香花火のように終わってしまう。まずは谷上で一緒に打ち上げ花火をあげないか』と言われたんです。最初は悩みましたが、天の啓示なのか、その3日後に上海行きの辞令が出て、一か月後に退職しました」(森脇)。

森脇の町づくりプロジェクトは始まったばかりだが、谷上に来たことで下関市を再生させるという森脇の夢はむしろ実現に向けて近づいたという。山本を通じてプロジェクトを聞きつけた下関市の起業家グループとのつながりが生まれ、下関市長とも面会。下関市から講演依頼も来るようになり、元銀行員の枠を超えた活動ができるようになった。

「森脇は地元を再生したいという熱意はありましたが、戦略面で未熟でした。谷上で経験を積んでから、地元に戻れば下関のためにもなる。彼は谷上プロジェクトのエバンジェリスト(伝道者)です。第二、第三の森脇を育て、彼らを各地に送り込めば、地方から日本を変えられるんです」(山本)

文=成相通子 写真=フジタヒデ

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