しかし、この戦略がどうやら失敗だったことが徐々にはっきりしてきた。2月の決算発表でアップルは「iPhone Xは発売以来最もよく売れたiPhoneである」と宣言したが、最新の調査で、iPhone 8シリーズの2端末の売上が、iPhone Xを上回っていることが明らかになった。
調査企業「CIRP」が4月25日発表したデータによると、米国の今年第1四半期の全iPhoneの売上に占める割合は、「iPhone 8」が23%、「iPhone 8 Plus」が21%、そしてiPhone Xは3位に沈み、16%となっていた。
これはクックの当初のプランとは異なる結果だ。アップルは今後の数ヶ月もこれまでと変わらず、iPhone Xの投入により端末の平均販売単価を押し上げられたとの主張を繰り返すだろう。iPhone Xの999ドルという高値は確かに平均単価を押し上げた。
しかし、昨年の第4四半期と今年の第1四半期を比較すると、平均販売単価は下がったと推測できる。4月からは新色のレッドがPhone 8シリーズに加わり、iPhone 8や8 Plusの売上はさらに伸びそうだ。第2四半期の平均販売単価はさらに下がることも予測できる。
アップルのiPhoneは非常に高い利益率を保っていることで知られ、高値で販売することで好調な業績を維持している。しかし、ティム・クックはマーケットシェアを犠牲にしてでも、端末ごとの利益を確保しようとしている。これは、比較的短いスパンで考えれば有効な戦略といえる。
だが、長期的スパンで考えた場合、いつまでこの戦略が持続可能なのかという疑問も浮かぶ。アンドロイドとの競争が激化するなかで、アップルはいつまで高価格化路線を持続させ、iOSの製品群の優位性を保つことができるのだろうか。
アップルは今年発売する「iPhone SE」の後継機種で、大胆な低価格化路線を打ち出すとの噂も出ている。もしかしたら、この端末でティム・クックは利益率を犠牲にしてでも、販売台数を増大させる新たな戦略に乗り出すのかもしれない。