テクノロジー

2018.04.29 16:00

なぜチャットワークが「町づくり」をするのか



2018年5月21日に開設されるコラボレーションスペース「.me」

様々なプロジェクトを町ぐるみで支援

谷上プロジェクトは、寄付で開設する「.me」をプラットフォームとして、地方創生や女性の働き方改革、教育改革、フードロス問題の解決など様々な社会課題の解決を目指して谷上で活動する森脇のようなプロジェクトメンバーを集い、彼らを支援して育成するという構想だ。

「.me」は、谷上駅直結のオフィス、ミーティング&イベントスペース、カフェなどの機能を備えた交流スペースで、開設・運営費用の寄付を募るクラウドファンディングが3月に始まった。寄付するとスペースの利用券やプロジェクトメンバーらと交流する権利などが「リターン」として付与される。

「本物が来たと思ったんですよ。生きていて良かったです」と語るのは神戸市医療・新産業本部新産業創造担当課長、多名部重則。米有力ベンチャーキャピタルの500 startupsと組み、起業家の育成プログラムを始めた神戸市のスタートアップ事業推進の旗振り役だ。17年9月に開かれた谷上プロジェクトの地元説明会で山本に会い、多名部はピンときた。

15年からスタートアップ育成事業に携わっていた多名部は、神戸市が再生するには、山本のように全国区で会社を起業した経験がある人物が町の核となり、スタートアップを育成する必要があると考えていた。待ちわびていた「本物」の登場に感動した多名部を起点に、神戸市長や市議らにもプロジェクトが浸透し、ふるさと納税制度によるクラウドファンディングの支援が実現した。

寄付控除も適用され、クラウドファンディングは当初目標として掲げていた1500万円をすでに突破。第二目標の2300万円を目指している(4月28日現在)。ふるさと納税で集まった寄付は一旦神戸市の収入となり、クラウドファンディングの事業者への手数料を除いた全額が谷上プロジェクトに流れる。神戸市にとってみれば、補助金や助成金を出さずにスタートアップが集まってくれる。谷上プロジェクトはまさに渡りに船だった。

ギブギブギブン

プロジェクトの発端となったのは、山本の「出る杭が打たれない、新しいことに思いっきりチャレンジして働けるシリコンバレーのような環境を作りたい。ポテンシャルのある谷上で町づくりをしたい」という思いだった。シリコンバレーにいた山本が、極度に失敗を恐れる日本の閉塞的な環境や、労働時間削減ばかり掲げる働き方改革に強い違和感を覚えたからだ。

チャットワークの東京オフィスでインタビュー中、山本がおもむろにガラス張りのドアに書かれた文字を指差した。「この会議室の名前はGIVE GIVEです。Give and Takeではなくて、与えて与えて与え続ける。そうしたら自分のもとにいつか帰ってくるんです」。奪い合いではなく、与え合う。山本が掲げる会社のコアバリューは「ギブギブギブン」だ。
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文=成相通子 写真=フジタヒデ

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