米テック業界で始まった「中国をコピーする」トレンド

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ベンチャーキャピタルが中国のスタートアップに出資する場合、かつては米国で成功したビジネスモデルを模倣する企業を選ぶケースが多かった。筆者が勤めるDCMも中国版ギルトグループ(会員制Eコマース)の「VIPShop」や中国版クレイグズリストの「58.com」、中国版グルーポンの「美団点評」、中国版グーグルと呼ばれた「バイドゥ」などに投資をしている。

これらの企業はオペレーションを中国市場に最適化し、本家よりも多くの顧客を獲得することに成功した。しかし、もはや中国企業が欧米を模倣する時代は終わり、欧米の起業家や投資家が中国企業を模倣する時代が到来したのが現在の状況だ。

バイドゥやアリババ、テンセントは独占的なプラットフォームを構築したばかりでなく、将来の起業家が腕に磨きをかける場を提供している。このようなエコシステムは「美団点評」や「新浪微博 (Sina Weibo)」、「JD.com」など新時代のテック企業の力でさらに拡大した。

最近ではニュースアプリ「今日頭条(Toutiao)」を運営する「バイトダンス(Bytedance)」や写真共有アプリの「快手(Kuaishou)」、格安Eコマースの「Pinduoduo(拼多多)」や自転車シェアの「Mobike」「Ofo」など次世代を担う有望なスタートアップが育ってきている。

中国のテック業界は、欧米のトップ校を卒業後に中国に戻った「海亀」や、先端テクノロジーに通じた若い中間層の増加によってますます活性化している。また、スマートフォンやモバイル決済の普及により、モバイル領域のスタートアップにとってはビジネスチャンスが拡大している。

中国のネット普及率は53.2%と米国の83.7%を下回っているものの、モバイル端末経由のインターネットアクセスは95%と非常に高い。中国ではPCの普及を待たずにモバイル端末が一気に広まったため、ネットユーザーはモバイル志向が高い。

スマートフォンの普及によって、モバイル決済も急速に広まった。「フォレスター」によると、2016年の中国におけるモバイル決済金額は9兆ドル(約987兆円)と、米国の1120億ドルをはるかに凌駕している。
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編集=上田裕資

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