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日本と世界の「教育のこれから」

「革命」を出版したエマニュエル・マクロン仏大統領(2016年12月撮影、Photo by Getty Images)

停滞の続くフランスの救世主として期待される40歳の若き大統領、エマニュエル・マクロン。彼の著書『革命』の中で、最も具体的な施策が述べられていた分野の一つに、教育改革がある。

私がこれまで綴ってきた主張と重なる部分も多い、フランスにおける教育革命についてその骨子をまとめつつ、我が国の教育の現状もあわせて考察してみたい。

経済格差と教育格差

フランスと日本の最も大きな違いは、義務教育における学力格差の有無であろう。『革命』にも書かれているが、フランスでは「生徒の5分の1が読み書きも計算もできないまま小学校を卒業」する。これは移民家庭の子どもたちが被害者になっているからである、とマクロン大統領は分析している。

一方で日本は、15歳時点での学力を調べるPISAの平均スコアは世界トップクラスである。習熟度レベル別の生徒分布を見ても、レベル7のうちレベル2以下に42%の生徒が分布するフランスとは大きく様子が異なる(日本ではレベル2以下は27%)。


出典:OECD 生徒の学習到達度調査(PISA) 2015年調査国際結果の要約

ただし、我が国において経済格差が教育格差につながっていないか、というとそうではない。2009年に、政令指定都市の100校を無作為に抽出して行われたお茶の水女子大学の『家庭背景と子どもの学力等の関係』調査を見ると、世帯年収と小学校6年生時点での国語と算数の正答率は、ほぼ正比例している。



日本が長年築いてきた、全国民をまんべんなく平均的に教育するというシステムに私たちは感謝すべきである一方、所得の低い家庭を中心に教育支援を徹底することが極めて大切である。

第7回のコラムでも指摘した通り、日本では生活保護家庭を中心に幼児教育段階から手厚い支援がされているが、幼稚園にも保育園にも通わず家庭で育児放棄されているような子どもたち、あるいは、小学校に上がっても家庭で知的好奇心を刺激するような(本やニュースに触れたり博物館や美術館に行ったりする)環境にない家庭の子どもたちが、その結果就学心を失わないための手立ては、引き続き議論が必要だろう。

「教員」改革の重要性

冒頭のようなフランスの状況を変革するために、マクロン大統領が提唱しているのが「教員の研修とサポート」である点は興味深い。私が官邸にて2014-15年に委員を拝命した「第七次教育再生実行会議」では、その最終提言(*1)の中で「教師に優れた人材が集まる改革」を提唱している。

具体的には、「教師自らが主体的、協働的で、能動的な学びを展開できるようにすることが重要であり、画一的な研修の履修を全ての教師に義務づけるのではなく、各学校のニーズに合わせて、教師の育成指標に基づきつつ、他の研修等でも代替できるよう柔軟に運用することが必要である」という教員研修の柔軟化と、「教師が専門職としての指導力を十分に発揮できるよう、例えば国・地方公共団体は、学校経営を支える事務職員の充実を図るなど、授業等の教育活動に専念できる環境を整備することが重要である」という教員サポートの充実である。

教員が変わらなければ、教育は変わらない。教員が変われる環境を提供しなければ、教育は変わらない。この原則は、フランスにも日本にも共通して言えることなのではないだろうか。

*1: https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouikusaisei/pdf/dai7_1.pdf

文=小林りん

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