テクノロジー

2018.06.18 16:30

「人間の生き方」を科学する、ヒューマノーム研究所の挑戦


ゲノムという言葉は聞いたことがあっても、エピゲノムにはなじみがない人も多いのではないか。ゲノムとは両親から受け継いだ、たとえば体格や太りやすさなどの体質という遺伝的なものを示す、生まれたときから決まっている情報だ。
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一方、エピゲノムとは、そのゲノムに施されたそれ以外の情報のことで、遺伝子の配列情報とは異なり、環境などによって後天的に変化する。

たとえば、一卵性双生児の例がわかりやすい。

双子は同じゲノム配列を持つが、成長につれ体の特徴や体質が異なってくる。エピゲノムによる変化の表れの一つだ。生活習慣など後天的要因からゲノムとそれに作用する分子の相互作用が変化し、ゲノムの働きが変化するのだ。また、がんをはじめとする病気の多くは、喫煙や飲酒、食生活の乱れといった要因から、エピゲノムの異常が蓄積することで発症するといわれている。
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「僕にとってエピゲノムは自然の織りなすものづくり」。エピゲノム解析を中心とした事業を行う株式会社Rhelixa CEOの仲木竜は言う。もともとコンピューターサイエンスが専門で、大規模エピゲノムデータを用いた多様な研究をするなかでビジネスプランを発案、東京大学大学院在学中に創業した。

「エピゲノムは後天的な要因で変化するので、操作もできるはず。つまり、自身のゲノムを使って新たな可能性を創発することができるんです」。

ヒューマノーム研究を通じ、さまざまな分野のデータとエピゲノム解析を掛け算することで、その世界を目指す。個々人の体の状態に合わせて環境を最適化していくことで、人間が持つ能力を最大化することができる。この社会的な価値は計り知れない。


小林孝徳◎株式会社ニューロスペース代表取締役社長。新潟大学理学部素粒子物理学科卒。自身の睡眠障害の経験を機に、睡眠の悩みを根本的に解決すべく、大学や医療機関と連携し『法人向け睡眠改善プログラム』を開発。

福田真嗣◎株式会社メタジェン代表取締役社長CEO。慶應義塾大学先端生命科学研究所特任准教授。文部科学大臣表彰若手科学者賞受賞。ビジネスプラン「便から生み出す健康社会」でバイオサイエンスグランプリ最優秀賞。

山田拓司◎株式会社メタジェン取締役副社長CTO。2006年、京都大学大学院理学研究科博士課程修了。博士(理学)。京都大学化学研究所特任助手、欧州分子生物学研究所研究員などを経て、2016年より東京工業大学生命理工学院准教授。

仲木竜◎株式会社Rhelixa 代表取締役社長。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。計算生物学者。次世代シーケンサーより得られた大規模ゲノム・エピゲノムデータの専用解析アルゴリズムの開発・応用を専門とする。2015年2月Rhelixaを設立。

文=谷本有香 イラストレーション=ニール・ウェッブ 写真=藤井さおり

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