「身体」の状態に耳を傾ける
心や感情とは別に、身体の状態も大事な要素となる。
例えば、ヘビーな案件や飲み会が続いて寝不足のときに、いつも通りパフォーマンスを上げ、結果に結びつけられるか。体調を崩している中で、瞬間瞬間にベストな判断ができるか。仕事を抱え込みすぎて体に負担がかかり、瞬間的にエネルギーが発揮できない状態になっていないか。
このように、瞬間・瞬間の自分の状態は自分自身のパフォーマンスだけでなく、仕事での成果や対人関係にまで影響を及ぼす。しかし、ここに意識を向けている人は思っている以上に少ない。
瞬間瞬間の自分の状態を適切にマネジメントするためには、感情や身体の瞬間・瞬間の状態を知ることが重要になる。その瞬間に起きている身体の感覚に意識を向けること、湧き起こってくる感情を自覚すること、そしてその瞬間の自分の頭にあるストーリーに気づくこと。
これらは瞬時におこり、すぐに変化したり、逆にずっと留まったりするが、それらをコントロールする(統制する・おさえつける)というよりも、ただ瞬間に起きる自分の状態に気づくことが大切だ。なぜなら、良い状態であれ悪い状態であれ、自分の状態を認識することができれば、適切な状態を作り出すための準備ができるからである。
感覚や感情に気づくには訓練が不可欠
ただ、前回のコラムでも書いたように、自分の感覚や感情を知るためには訓練が必要だ。やってみるとその難しさがわかるが、多くの人は自分自身の状態を常に観察する習慣がないので、自分の感情・感覚に気づくことが難しい。
試しに、この数日間で自分が体験した感情の種類をリストアップして、その時の状況を思い返してみると面白い。日頃意識をしないことだから、思いのほか思い出すのが難しかったり、そもそも感情の種類をリストアップするのが難しかったりする。
瞬間的に起こる自分の感情や感覚をメモしたり、その感情や感覚がどのように自分の思考につながっているか観察したりするのもよいだろう。自分の感覚・感情・思考が思いのほか繋がっているのが見えてくることもある。
こうやって瞬間に意識を向け、自分自身の状態に気づくなかで、「普段とどのような違いがあるか」「その違いから、どんな洞察が得られるか」を意識してみると良い訓練になる。ほんの小さな「違い」かもしれないが、その違いを積み重ねることが大事なポイントだ。それが自分自身をマネジメントし、ひいては他者や組織にも影響を与えるきっかけになりうる。
前回も書いたが、自分自身の感覚や感情のことをちゃんとわかっていない人が、他人の感情や感覚がわかるはずもない。そういった意味でも、「瞬間・瞬間の自分の状態を知ること」は本当に大事なことだと思う。
連載:組織マネジメント以前に大切なこと
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