戦後になって、レーシングカーを公道用にデチューンしたロード・ゴーイング版を発表し、アメリカで絶大な人気を得た。レーシングカーを公道でエレガントに乗るスタイルは、ヨーロッパの王侯貴族の手でさらに洗練されていく。この時代に作られた名車「250GTO」は、36台という限られた数だったたこともあり、50億円以上で落札されたこともある。
さて、そんなフェラーリは、昨今、4ドア版やSUVに食指を動かすスポーツカー・ブランドも少なくないことをどう考えているのだろうか。
「我が社の遺伝子には、SUVは存在しません。我々はあくまで、2ドアのGTカーやスポーツカーのメーカーだからです。もちろん、最新技術を無視するつもりはありません。iPhoneと連携するApple CarPlayを取り入れるなどには積極的ですが、クルマがスマホになるような“伝統的なフェラーリの魅力”を削ぐことはしません。フォーミュラ1で磨かれた電動化の技術を応用することはあっても、エンジン車の魅力を削ぐようなことも決してしません」と、セルジオ・マルキオンネ会長は語る。
実際フェラーリの最新版である12気筒モデル「812スーパーファスト」は、内燃機関の技術の粋を注ぎ込んだようなスペックだ。800ps/718Nmもの強大なパワーを生み出す6.5リッターV12エンジンを搭載し、停止した状態から時速100kmまでを3秒以下で加速する俊足ぶりを発揮する。
レースでの勝利のために最先端を追い求め、戦いの場で得た技術革新を搭載した魅力的なロードゴーイング版を世に送り出す。それこそが、1947年に生まれて以降、常に最高峰のスーパー・スポーツカー・ブランドであるためにフェラーリが貫いてきた哲学なのだ。