ライフスタイル

2018.04.03 10:00

「習慣化」の罠 不感症から抜け出す身体感覚の取り戻し方

NzNonz / shutterstock

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「セルフマネジメント」を軸に、まず自分自身をマネジメントすることで大きく可能性を広げられること、意味ある人生を送り楽しくハッピーになれること、そして組織のマネジメントや社会に良い影響をあたえられるようなプログラムを提供したいと思い始めてから2年。試行錯誤の中でプログラムを始めて半年。その間に多くの人に会い、話を聞いてきた。

大企業に勤める典型的なビジネスパーソン、外資系企業で常に数字に追われるマネージャー、スタートアップで夢を持って働く起業家、地方に戻り働く意味を見出した若手リーダー、社会課題を解決しようと強い思いを持って行動するソーシャルイノベーター、仕事をいったんお休みしている人、家庭を第一に人生設計している人、すべてにやる気を持てず悶々としている人…。

日本で働く日本人、日本で働く外国人、海外で働く日本人、海外で働く外国人。年齢層だと20代前半から60代の後半まで幅広く、大学生や新卒社会人から中堅社員、マネージャ(課長層・部長層)やトップマネジメントまで、あらゆる層の人たちに話を聞いてきた。だいたい1000人くらいの方々と話したと思う。

その中でわかってきたのは、前回の記事で書いたように「自分が何者なのか?」「自分がやりたいこと、大切にしていることは何なのか?」がわからない(考えたことがない)だけでなく、そもそも自分の「感情」に気づいていなかったり、頭だけで考えることが常態化することで感情を無意識に無視していたり、自分が今まさに感じている身体感覚についてわかっていないことが多い、ということだ。

これまで生きてきた中で脳に刻まれ蓄積された「習慣化された行動様式」、つまり自動的・無意識的な判断からくる行動をそのまま繰り返し、自動的かつ反復的にいつもと同じコミュニケーションスタイルで人と接し、パターン化された思考や今までの成功体験から意思決定を行う。それはそれでうまくいくこともあるし、脳のリソースを使わないから省エネ状態でいられる。

一方で、習慣化された行動ばかりとっていると、人間の大事な部分である「感覚」や「感情」に対して不感症状態に陥る。すると、なぜかストレスや疲れだけがたまり悶々としはじめ、仕事にやりがいも感じない。だけどやることはドンドン溜まっていくから、とりあえず頑張っている人がとても多い。

そんな「不感症+とにかく頑張る症候群」の中で、多くの人は自分の外にあるものだけに意識を向け続けている。「本当に心が休まった状態」を忘れ、「どうすればリラックスできるかわからない」状態に陥る。そしてさらに不感症がひどくなる。実際、「本当にリラックスするという感覚がわからない」「ずっと突っ走ってきたので、どうしたら休息できるのかがわからない」という声を多く聞く。

そういう私も、海外に住み留学する3年前まで同じだった。24時間365日、週末も祝日も休まずに仕事をするのが普通だと思っていたし、それが社会人として良いことだと思っていた。仕事をやり続け、プレッシャーを自分に与え続けていればパフォーマンスが上がり、結果も良くなり、かつ幸せになるものだと思っていた。

しかし、常に頭をフル回転させ、身体的・精神的な疲れを無視して(ないしは意識できずに)働き続けた結果、自分が本当にしたいことがわからなくなり、視野が狭くなり、上記のようにモチベーションが続かない中で仕事だけが増えるという状態が続くようになった。

そして、いつもダルさや重さを感じ、仕事も人生も心から楽しいと思えなくなっていた。だからこそ、人生をリセットすることに決め、海外に移って留学をする選択をした。
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文=稲墻 聡一郎

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