チーム内では、メンバーの意見が分かれていたことに加え、他に優先すべき課題もあったため、私が指導に入るまでの3か月間、議論が行き詰まっていた。そこで私は「あなたの会社は何で知られていますか」と尋ねた。
答えは疑いなく「ブランド」だった。返答にかかった時間は5秒未満だ。この問題はマネジメントチームだけで解決できただろうか? おそらくできただろう。しかし問題なのは「なぜ解決しなかったのか」だ。
ここで私は、現在マイクロソフトでスカイプのデザイン担当ディレクターを務めるピーター・スキルマンが行った「マシュマロチャレンジ」と呼ばれる実験を思い出した。実験の内容は簡単だ。調理前のスパゲティ20本、1メートルのひも、テープ、マシュマロを1つ使い、2つのグループが競い合ってできるだけ高いマシュマロタワーを建てる。唯一のルールは、マシュマロを一番上に置くこと。
面白いのはここからだ。一つのグループは経営学修士(MBA)課程の学生から成るチームで、もう一方は幼稚園児のグループだった。MBAの学生たちは戦略を立ててアイデアをぶつけ合い、素晴らしい質問を重ねて、独創的な選択肢を複数考案した上で、選択肢を一つに絞ってタワーの建設に取り組もうとした。だが学生らは無残にも失敗した。なぜだろう?
MBAの学生は自分のアイデンティティーにとらわれていた。他のチームメンバーを怒らせるのを恐れたり、他人にどう思われるかを考えてアイデアを言わなかったり、チームにどうすればうまく溶け込み影響力を及ぼせるかや、「影響力のある人」は誰かを見極めようとしたりしていた。