学生らは、一つのチームではなく、自分個人がどう問題を解決するかを考えていた。自分のアイデンティティーの管理に時間を割くあまり、目的を見失った。つまりは、同じ空間を共有する個人の集まりになってしまって、チームとして機能しなかったのだ。
幼稚園児のチームはその逆だった。誰がどのようなアイデアを出したかではなく、チームがこれからすべきことに自然と焦点を当てることで、個人の集まりではなく一つのシステムとして機能したのだ。グループとしてどのように協力したかが、個人としての貢献よりも重要だった。
興味深いことに、弁護士や最高経営責任者(CEO)を対象とした似たような実験でも、同じ問題が見られた。子どもたちはマシュマロのことしか考えていなかったのに対し、CEOはCEOになることに注力していた。
ホワイトハウスの「マシュマロ」
レックス・ティラーソンが国務長官を解任された理由は、その能力ではなく「マシュマロ効果」だ。マシュマロ効果はあらゆるグループやチームにある問題であり、全員が認識しているものの、気まずいため誰も対処したがらない。マシュマロ効果の問題とは、人々がしがみつき、その貢献や交流の仕方に影響を与えるアイデンティティーにある。
ティラーソンとトランプの意見が一致しなかったのは仕方ない。しかしドリス・グッドウィン著『リンカーン』でも描かれていたように、リンカーンが大統領選後にライバルをまとめて作ったチームも多様な視点を持っていた。
意見の相違は解雇の理由にならない。しかし、チームの雰囲気を変えてしまう力関係を理由として解雇されることはある。そして力関係とは、人々が「持ち込む」アイデンティティーによって決まるものだ。