平等の権利を求めて立ち上がった、レズビアン・カップルの闘いの行方

映画『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』で共演したエレン・ペイジ(左)とジュリアン・ムーア(右)(Photo by Jamie McCarthy/Getty Images)

今年11月、自民党の竹下亘総務会長の「同性パートナーが、天皇、皇后両陛下主催の宮中晩餐会に出席するのは反対」という発言が、波紋を呼んだ件は記憶に新しい。

同性愛者や支援者たちの反発に竹下氏は反省を表明し、河野太郎外相が28日の衆院予算委員会で、祝賀レセプションの来賓について、「法律婚・事実婚あるいは同性、異性にかかわらず、配偶者またはパートナーとして接遇するよう指示した」と明らかにした。

一方、同日、カナダのトルドー首相は下院での演説で、性的指向を理由とした公職追放など、性的少数者(LGBT)に対してかつて「国家による組織的な抑圧と排斥」があったと認め、公式に謝罪した。

マジョリティと平等の権利を求めるセクシュアルマイノリティの運動の成果が、ようやく「公」の反省や謝罪に現れてきている。

今回紹介するのは、2015年のアメリカ映画『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』(ピーター・ソレット監督)。二人のレズビアンのカップルが、異性愛者と同様の権利をいかに獲得していったかを、実話を元にして描いている。

2002年、ニュージャージー州オーシャン郡。ローレル(ジュリアン・ムーア)は、地元の群政委員にも一目置かれるほどの評判を勝ち取っている敏腕刑事だ。相棒のデーンとは強い信頼関係で結ばれている。

ある休日、公共の体育館でのバレーボールに参加した後に声をかけてきたのが、彼女より一回りは若そうな女性、ステイシー(エレン・ペイジ)。互いが同性愛者であることを無言のうちに察知するこの出会いから、クラブでの初デート、ステイシーがリードするダンスの場面、そして親密な語らいからベッドを共にするまでは、急速に惹かれ合っていく男女のそれと何も変わらない。

目下捜査中の大きなヤマを抱える刑事として気の休まる暇のないローレルと、その日常に戸惑うステイシーのちょっとした喧嘩と仲直りには、つき合い始めのカップルの初々しさが滲んでいる。海辺でのリラックスしたデートで、将来望むものをローレルに聞かれたステイシーは、「愛する人に愛されて、家があって犬がいて‥‥」と語る。これも、多くの人が夢見る平凡な幸せだろう。

一年後に彼女たちは、二人の家を手に入れ、犬を飼うという夢を実現。揃って役場に出かけ、婚姻制度に準じる新制度である「ドメスティック・パートナー法」によって、晴れて公認の家族になる。当時、まだ同性愛者の結婚は法的に認められていなかった。

ローレルの収入で賄う家のローン返済を少しでも手助けしたいと、ステイシーは機械いじりの特技を生かして自動車修理工場に就職。一方で、ローレルが同性愛者であることを初めて知ってショックを受けるのが、相棒のデーンだ。なぜ秘密にしていたのか問う彼に、警察というお固い職場でカミングアウトするのがどれだけ難しいかをローレルは訴える。

男性中心の社会でゲイよりもさらに厳しい状況に晒されがちなレズビアンの位相に気づかせるシーンが、さりげなく散りばめられている。
次ページ > 二人の幸せは長くは続かず...

文=大野左紀子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事