─2016年1月、あなたが創業したOgmento(現Flyby Media)がアップルに買収されました。アップルはARに関心を持っているのでしょうか。
アップルは5年ほど前から、スマートグラスやウェアラブル関連の特許をとったり、AR系のテクノロジーを持つ会社をいくつも買収したりしてきました。マイクロソフトのKinect(モーションセンサーデバイス)の技術的基盤となったPrimeSenseもその一つですし、顔認識の会社Emotientも買収しています。また昨秋に発売されたiPhone 7 Plusはデュアルカメラを搭載しました。
こうした一連の動きから推測するに、アップルがARやVRのプロジェクトに取り組んでいることは間違いありません。
─アップルのAR市場参入は近いとみていいのでしょうか?
アップルは市場が熟するのを待っているのだと思います。ハードウェアが成熟して、消費者の関心が高まったとき、大々的に宣伝し、市場をいっきに制覇します。それが彼らのいつものやり方です。
たとえばiPodはmp3プレーヤーでは後発組でしたが、大成功しました。彼らは最適なサイズ、充分なバッテリーの持続時間、さらにiTunesというソフトウェア、これらがすべて揃ってからプロダクトをリリースし、ナンバー1になりました。iPhoneも同じように絶妙のタイミングで投入されました。スマートグラスについても、同様のアプローチをとるのだと思います。
アップルがARデバイスをいつ出すのかを予測するのは難しい。でも、私は17年末までに何らかの発表があってもおかしくないと見ています。
─ARの未来についてはどう考えていますか?
世界には現在、40社以上のスマートグラスのメーカーがあります。そのうち、すでに市場に製品が出回っているのは10〜15社くらいです。これらがいずれ淘汰され、3〜4社に減るでしょう。
またARとVRのハードウェアはいずれ同じものになると思います。ARとVRは利用方法が違っても、用いられている技術の土台は同じ。だから両者は分けて考えるのではなく、ともに進化させることができます。
実際、VRとARはユースケース(導入事例)も似てきています。VRは今のところ、ゲームやエンターテインメントの分野が主流ですが、医療シミュレーションなどでも使われ始めていて、今後ほかの分野にもどん広がっていくでしょう。一方のARは、おもにビジネスや商品カタログなど実用目的で使われてきました。ですがスマートグラスが軽量化して性能がもっと上がれば、エンターテインメントの分野でももっと使われるようになります。
─VRとARはやがて一つになると?
莫大な投資額を集めて話題になっているマジック・リープは例にとりましょう。彼らは角膜にイメージを投影するという技術を使っています。今は視界に少しだけグラフィックを描くだけですが、視界全体に描けるようになれば、ARではなくVRになりますよね。このようにして、将来的にユーザーはARとVRの世界をスムーズに行き来できるようになるのです。
オリ・インバー◎1965年、イスラエル生まれ。「AR業界の顔」として知られ、世界最大のARイベント「Augmented World Expo」を開催する。2009年にARゲーム会社「Ogmento」(現「Flyby Media」)を共同創業し、2012年に非営利団体「AugmentedReality.org」を設立。現在、AR専門ファンド兼インキュベーター「Super Ventures」の創業者・代表。