ソニー自身もPSVRについては多くを語っていない。PS4 Proを含むPS4の累計実売台数が全世界で5,000万台を超えたというニュースは流れたが、PSVR の販売台数に関する言及は無かった。ソニーはPSVRの売上は順調だと述べるのみだ。
調査企業SuperDataは2016年のPSVRの売上台数予測を、以前の260万台から75万台に減らしている。この数字はオキュラスやHTCより上だが、自慢できる数字と呼ぶべきものではない。2017年を迎えた今、ソニー自身が「スロースタート」を予想しているとしても、PSVRの今後について予測するのはかなり難しい。
PSVR向けゲームのリリースに関していうと1月24日には「Resident Evil」が、3月14日にはユビソフトの「Star Trek Bridge Crew」が発売される。通年では15本程度のゲームがリリース予定というが、ソニー自身のサイトにも2017年のリリースに関してあまり多くは語られていない。
この状況を一体どう捉えるべきなのだろう。PSVRに人々の関心を向けさせるタイトルは、今後まだ登場するのだろうか。
ソニーの置かれた状況は厳しい。立ち上げ当初のPSVRの売りはPS4と連動させることにより、オキュラスやHTCの製品よりも格安でVR体験が可能な事だった。PSVRは価格面でのメリットはあるが、オキュラスやHTCに比べるとテクノロジーとしての完成度は劣る。時間が経過する中でPSVRの技術は古びたものになっていく。そうなれば次に登場するのはPSVR 2.0ということになるのだろうか。
ソニーが、マイクロソフトがKinectで犯した失敗と同じ道を辿ろうとしているとは思いたくない。今年のE3ではPSVR関連の発表も期待できるだろう。しかし、全てが思わぬ方向に転がったとしたら……。ソニーがこの製品から撤退してしまうことも大いに考えられるのだ。
PSVRの将来が危ういのと同様に、コンシューマー向けVR市場全体についても、現状では確固たるビジョンが見えてこない。テクノロジーとしてのVRは画期的でエキサイティングだが、まだニッチの領域を飛び出してない。
PSVRに関する進捗が伝えられない一方で、オキュラスやHTC Vive関する話もここ最近めっきり聞かなくなった。PSVRが非常にユニークなポジションにあることは確実だが、ソニーはこの製品の売り出しに苦戦しており、その事はVRデバイスが安価さや操作のしやすさを打ち出しても、消費者を十分説得することはできないという事実を示している。
ソニーはPSVRの次期バージョンに向けての構想を温めているのかもしれないし、今年中に1本か2本の大型タイトルがリリースされるのかもしれない。しかし、現状でソニーはほぼ沈黙しており、今後を予測することは難しい。その間にこのテクノロジーは徐々に古びていき、目立ったゲームも発表されないまま時間だけが過ぎていくことも考えられる。