副大統領の選任によって、大統領選の結果が決まることは稀だ。だが、例外もある。歴史家の多くは、1960年の大統領選で、ジョン・F・ケネディがテキサス州選出のリンドン・ジョンソン上院議員を副大統領候補に選んだことが、対リチャード・ニクソンとの僅差の勝利を招いたと考えている。その指名で、いくつかの南部の州を制することができたからだ。
そして多くの専門家は、08年にジョン・マケイン大統領候補がアラスカ州知事のサラ・ペイリンを副大統領候補に指名したことが、共和党の得票を失った原因だと考えている。なぜなら、マケインに代行が必要になった際、ペイリンは大統領には不適任だと考える人が多かったからである。
政権によって副大統領の役割は変わるが、70年代以降に特に拡大している。じつは、アメリカの歴史では、9人の副大統領が思いがけず大統領になっている。戦後では、ハリー・トルーマン(45年)、リンドン・ジョンソン(63年)、ジェラルド・フォード(74年)などだ。もし2期選ばれれば、トランプは大統領を70歳〜78歳まで、クリントンは69歳〜77歳まで、とアメリカ大統領としては高齢になる。
つまり、今年の選挙で誰が副大統領になるかは些末な話ではないのだ。
グレン・S・フクシマ◎米国先端政策研究所(CAP)の上席研究員。米国通商代表部の日本・中国担当代表補代理、エアバス・ジャパンの社長、在日米国商工会議所会頭等を経て現職。米日カウンシルや日米協会の理事を務めるなど、日米関係に精通する。