大統領を決めるに留まらない、11月8日の選挙が持つ重要な意味

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11月8日の米大統領選まで残すところ3カ月を切り、世界の関心は次期米大統領が、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプのどちらになるかに集まっている。

ところがアメリカでは、議会と最高裁判所についても同じくらいの関心が払われている。アメリカが、行政・立法・司法の三権分立にもとづいているからである。

アメリカでは、議会が大統領を牽制することができる。つまり、大統領が望む法律の成立を拒否したり、大統領の拒否権を却下して法律を成立させたり、弾劾権を使って大統領を罷免したり、大統領の指名候補を拒否したり、大統領が署名した条約の批准を拒否することで牽制できるのだ。

議会は、連邦裁判所に対して下級審の数と管轄を変更したり、弾劾権を使って判事を解任したり、判事に指名された候補者を承認しないことで牽制する。大統領は、議会が通した法律を拒否して議会を牽制し、判事を任命することによって連邦裁判所を牽制できる。

そして裁判所は、法案を違憲と宣言することによって議会を牽制でき、大統領やその部下の行為を違憲または法律違反と宣言することによって牽制することが可能だ。

11月8日の選挙で選ばれるのは、大統領と435人の全下院議員と、100人いる上院議員のうちの34人である。下院には現在、247人の共和党議員と、188人の民主党議員がいるが、民主党が過半数を得る可能性は低い。

だが、上院では共和党54議席に対して民主党46議席であり、選挙は共和党の24議席と民主党の10議席を対象に実施される。もし、民主党が共和党から4議席を奪い、クリントンが勝てば、民主党が過半数を握ることになる。これは、上院で同数の場合、副大統領に決定権があるからだ。

民主党が上院で過半数を獲得する可能性は非常に高い。それは、共和党がイリノイ州やウィスコンシン州、ペンシルベニア州、オハイオ州、ニューハンプシャー州、フロリダ州、ノースカロライナ州、ミズーリ州、などで弱いためである。上院で民主党が多数を占めれば、クリントンが大統領になった場合、政策の批准や指名候補の承認がより容易になる。
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文=グレン・S・フクシマ

この記事は 「Forbes JAPAN No.26 2016年9月号(2016/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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