ペンスとケインは、いずれも全国的な知名度は低い。しかし、トランプとクリントンはそれぞれ自らの大統領選挙にとって彼らを価値ある存在だと考えている。例えば、ペンスは、13年にインディアナ州の知事になるまで12年間も下院議員を務めており(01-13年)、トランプに欠けているワシントンD.C.での経験とネットワークを有している。
一方、ケインは、大統領選挙の勝利に重要なバージニア州選出で人気のある上院議員で、クリントンには価値ある存在である。また彼は、市長や知事、上院議員を務め、行政と立法の経験が豊富であり、さらに、ハーバード・ロー・スクールの学生時代に、1年間休学してホンジュラスで働き、スペイン語を話し、外交にも高い関心を持っている。加えて、ケインは、クリントンにとって最大の弱点である白人男性層票の獲得に貢献できるかもしれない。
クリントンとケインは、ほとんどの政策問題について同意見だが、異なる点もある。例えば、クリントンはTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に関しては条件付きで反対だが、ケインは支持している。 そして、ケインはカトリック教徒として個人的には中絶に反対しているが、一貫して中絶を許す法律を尊重し、それに反する行動をしたことはない。
一方で興味深いのは、トランプとペンスは幅広い政策問題に関して、立場が大きく異なることである。ペンスは、トランプの「イスラム教徒のアメリカへの移民禁止」という提案を、「攻撃的で違憲」だと批判している。ペンスは同性婚を含む同性愛者の権利に大反対しているが、トランプはLGBTの権利への支持をたびたび表明している。外交政策については、ペンスはイラクに対するアメリカの戦争を支持しているが、トランプは反対している。ペンスは公にNAFTA(北米自由貿易協定)とTPPを支持しているものの、トランプは両方ともアメリカの経済や労働者に有害だとして強く非難している。
加えて、トランプとペンスは気性の面でも対照的だ。トランプは攻撃的で敵対心が強いのに対し、ペンスは対立や誹謗中傷キャンペーンを嫌っており、「私は1番にキリスト教徒であり、2番に保守主義者、そして3番目に共和党員である」と、繰り返し話している。彼らが互いに補い合って相乗効果を生むのか。それとも、そりが合わず、チームとして機能せずに終わるのかー。この点は興味深い。