なぜフィリピン人教師は「世界一」なのか
目新しいのは校舎や寮だけでない。授業の質自体も向上している。以前のフィリピン留学は「先生にカリキュラムを任せっぱなし」と批判されることもあった。
「忙しいシーズンに1週間だけ雇われている先生もいて、授業中に先生から『もう来週辞める』なんて言われたこともあります。どちらかというと、英語が話せるフィリピン人をただ寄せ集めて授業させているという感じでした」と、セブで2校の留学経験をもつ中西佑樹氏は言う。
中西氏は昨年、米アップルの元シニアマネジャー松井博氏とともに、セブ市内に語学学校「ブライチャー」を立ち上げた。そのブライチャーで顧問として、自ら教鞭もとる松井氏はこう説明する。
「フィリピンで英語教師は二流の職業。短期雇用だからです。一流なのはコールセンターのオペレーター。正規雇用だし、アメリカ人相手に話さないといけないから、要求される英語の水準もずっと高い」
今でも英語教師の待遇はそれほどよいわけではないが、ブライチャーをはじめ、正規雇用を打ち出す学校も出始めている。
その先駆けとなったのは、前出のQQイングリッシュだ。同校では800人いる教師全員を正社員化。また教師のトレーニングにも日々力を入れ、全員が英語教授法の資格「TESOL」を取得している。
一方、社会人限定の「MBAセブ校」もカリキュラムには定評がある学校の一つ。生徒数が40人程度とコンパクトな同校では、生徒一人ひとりのニーズに合わせてカスタマイズした授業づくりを心がけている。代表の呉宗樹氏は説明する。
「1カ月後に顧客に英語でプレゼンテーションをしなければいけないとします。であれば、どういったプレゼンなのか詳しく話を聞いて、先生と一緒にプレゼン資料を作っていき、文章構成のチェックから、実際のプレゼンの演習までやったりします」
通信関連企業の研修で同校に留学した武藤彰英さん(46)は「先生の質の高さに驚いた」と語る。