「コンテナ収納検索サービスの『トランクルーム』事業は、入社2年目で提案して、3年目で事業責任者になっていますね」
1995年創業のIT企業「ネクスト」の人事本部長、羽田幸広はこともなげに話す。
新卒2年目の社員の企画が事業化され、翌年に本人がその責任者に-。にわかに信じられない話だが、「トランクルーム」の他にも、音楽ライブの同行者を募るアプリ「ライブマッチ」は、新卒3年目だった社員が考え、4年目から事業責任者に就任した。
ネクストが行う社内新規事業提案制度「スイッチ」には、内定者からマネジメントクラスまで幅広く応募可能。書類選考や面接、最終プレゼンを経て子会社にまでなったアイデアは、6社にものぼる。
この制度は2008年、ネクストの「日本一働きたい会社プロジェクト」の一環で生まれた。社員が自ら挑戦したい仕事を提案したほうが会社のためになると考えたからだ。「やらされると仕事は苦痛ですが、自分がやりた仕事をしているときはストレスがないもの」と、同社の井上高志社長は語る。
そうした「内発的動機」に基づいた人事施策は他にもある。“社内大学制度”だ。09年開校の「ネクスト大学」は、(1)ビジネス学部、(2)営業学部(営業)、(3)ものづくり学部(エンジニア)から成り、それぞれに、必須・選択・選抜プログラムがある。
選択プログラムでは、年間40〜60の講座が開かれており、社員は好きなものを受講できる。年間延べ500人以上が、「英会話」や「UX研究」、「デザイン思考ワークショップ」などの講座に参加。多くの講座では「社員」が講師を務めている。ゼミナールは就業時間外で開かれる上に、人事評価などにもほとんど影響しない。それでも社員たちは手弁当で講義の準備をしてくるという。
給与や役職といった「外発的動機」で社員のモチベーションを保ち続けるのは難しい。井上も「“ニンジン”をぶらさげても100年続く企業にはならない」と話す。
「社員のモチベーション向上は、企業競争力につながります。経営の観点からも合理的なのです」