僕は芸術系大学の教授もしているのだが、芸術大学は「1%の天才と99%のニートをつくっている」と揶揄されることもある。しかし、仕事でもなんでもすべてをアートと捉えて考えると、クリエイティビティはもっと生まれるのではないだろうか。
たとえば道の案内板を各地方のアーティストがつくったら、実用性と芸術性の狭間で悩んだ末に、良いものが生まれるかもしれない。銭湯にある雄大な富士山の画だって、プロの銭湯絵師を存続させ、眺めるお客さんを癒すという、大きな価値を生み出している。
それから常々思うのは、作品の価値とはクリエイティブそのものだけでなく、「誰と出会うか」が重要だということ。そこで無名のアーティストたちがパトロンに出会うための仕組みを提案したい。
たとえば、クリスティーズによる将来性の高い無名作家を発掘するチームがあって、ジェット機で世界を横断しながら、その作家の卵たちのアトリエを回るツアーを企画するなんてどうだろう? ツアーの価格設定は1,000万円くらい。そのツアーで出会い、自分が買った無名作家の作品を自らの力で育て上げていく。
先日、ZOZOTOWNの前澤友作さんがバスキアの作品を約62.4億円という、バスキア史上最高値で落札していたけれど、バスキアだってウォーホルが見つけなければアート界に存在し得なかった。“未来のバスキア”と巡り合うための代金が1,000万円なら、決して高くないと思う。