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2016.08.11 17:00

「未来のバスキア」と巡り合うための1000万円[小山薫堂の妄想浪費 Vol.13]


僕は芸術系大学の教授もしているのだが、芸術大学は「1%の天才と99%のニートをつくっている」と揶揄されることもある。しかし、仕事でもなんでもすべてをアートと捉えて考えると、クリエイティビティはもっと生まれるのではないだろうか。

たとえば道の案内板を各地方のアーティストがつくったら、実用性と芸術性の狭間で悩んだ末に、良いものが生まれるかもしれない。銭湯にある雄大な富士山の画だって、プロの銭湯絵師を存続させ、眺めるお客さんを癒すという、大きな価値を生み出している。

それから常々思うのは、作品の価値とはクリエイティブそのものだけでなく、「誰と出会うか」が重要だということ。そこで無名のアーティストたちがパトロンに出会うための仕組みを提案したい。

たとえば、クリスティーズによる将来性の高い無名作家を発掘するチームがあって、ジェット機で世界を横断しながら、その作家の卵たちのアトリエを回るツアーを企画するなんてどうだろう? ツアーの価格設定は1,000万円くらい。そのツアーで出会い、自分が買った無名作家の作品を自らの力で育て上げていく。

先日、ZOZOTOWNの前澤友作さんがバスキアの作品を約62.4億円という、バスキア史上最高値で落札していたけれど、バスキアだってウォーホルが見つけなければアート界に存在し得なかった。“未来のバスキア”と巡り合うための代金が1,000万円なら、決して高くないと思う。

イラストレーション=サイトウユウスケ

この記事は 「Forbes JAPAN No.25 2016年8月号(2016/06/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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