―このたびはジャン=ミシェル・バスキアの『UNTITLED』、落札おめでとうございます。
前澤:ありがとうございます。
―まず、落札した日のことを振り返っていただけますか。
前澤:はい、その日、僕はオークション会場にはいなかったんです。当日は会場内に代理人を置いて、代理人経由で電話入札しました。
石坂:私もたまたま会場にいたんですが、『UNTITLED』はこのオークションで一番注目されていた作品であり、3,200万ドルからスタートして、あっという間に4,000万ドルを超えたんです。会場は物音ひとつせず、咳払いも聞こえず、緊迫していました。そして競り合いののち、前澤さんが5,728万5,000ドル(約62.4億円、手数料込み)で落札してハンマーが叩かれた瞬間、割れんばかりの拍手が起きました。
―何人ぐらいで競ったのでしょうか。
前澤:正確にはわかりません。でも4,500万ドルを超えたぐらいから1対1でした。
―相手が誰かはわかるのですか?
前澤:いいえ。ネットの生中継で誰が手を挙げているのかが見えるんですが、相手の方もクリスティーズの代理人を通して入札していたので、ご本人がどなたかはわかりません。
―落札した瞬間、どのような感慨が?
前澤:素直にやった!という感じです(笑)。周りにいたスタッフ全員とハイタッチして、喜びました。
―オークションというのは、すべての出品作品を事前に直接見ることのできる“プレビュー”というのがあるそうですね。
前澤:ええ、オークションは1日限定ですが、プレビューは何日間か設定されているので、それを見に行きました。
―石坂さんと行かれたのですか?
前澤:いえ、会場で偶然お会いしました。
石坂:前澤さんも私もそうなんですが、真のコレクターというのはカタログだけでは判断しません。自分の目でサイズによるインパクトや、作品の状態を確認して決めるものなんです。